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離れてはならない
第三章
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かくテューポーンは恐ろしかった。何しろ神々の長であるゼウスしか闘えないまでだ。アフロディーテもこのことは嫌になる程わかっていた。
 それでだ。魚になって逃げるとだ。我が子に告げてだ。
 アフロディーテは河に飛び込んだ。エオスもそれに続く。飛び込むその中でだ。
 二人は魚になった。そしてだ。河の中をひたすら泳いでいく。
 だがその中でエオスの魚はアフロディーテの魚から離れようとしていた。それを見てだ。
「エオス、駄目!」
 アフロディーテは咄嗟に叫んだ。そして。
 自分の力で薔薇色の帯を出した。その帯で。
 エオスの魚の尻尾を括った。そのうえで己の尻尾、魚のそれにもくくりつけた。そうしたうえで我が子に対してだ。こう言ったのだった。
「これで離れることはないわ」
「お母さん、こうしてまで」
「そうよ。離れたら駄目なのよ」
 切実な声でだ。母は子に言った。
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