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真田十勇士
巻ノ七十四 最後の花見その一

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                 巻ノ七十四  最後の花見
 唐入りの戦は続き大名達の多くが出陣してだった、そのうえで。
 天下にだ、重い話が流れていた。
「このまま戦が続けば」
「どの家も疲れきってしまう」
「大変なことじゃ」
「もう戦が終わって欲しいが」
「まだか」
「まだ戦が終わらぬか」 
 こうした言葉が出ていた、幸村もそうした重い言葉を耳にしていた。それで十勇士達にも浮かない顔で話した。
「戦が長引いてな」
「はい、どうにもですな」
「天下が重いものになっております」
「折角泰平になったというのに」
「唐入りの戦が続いて」
「どうにもです」
「多くの家が疲れております」
 このことを口々に話した、十勇士達も。
 だがそれでもだった、今の彼等は。
「どうにもなりませぬな」
「太閤様が戦を続けたいとお考えです」
「勝っているからこそ」
「その様に」
「これでは」
「うむ、難しい」
 戦が終わることはとだ、幸村は言った。
「どうもな」
「ではこのまま」
「太閤様が首を縦に振られることはなく」
「天下は重いままですか」
「そして豊臣家の天下もな」
 それもというのだ。
「武士も民達もな」
「これでは、とですな」
「そうした空気も出ていますな」
「関白様のこともありますし」
「どうしても」
「このままではいかん」
 幸村は難しい顔で述べた。
「何とかこの空気が晴れてな」
「泰平になった時の様に」
「明るさが戻れば」
「そうなってくれれば」
「拙者もそう思う、重く暗くなっておる」
 天下がというのだ。
「嫌なものじゃ」
「ここは何かです」
「明るい話が欲しいですな」
「せめて」
「そうじゃな、そしてここで酒を飲むとな」 
 浮かないその時にというのだ。
「それはよくない」
「ですな、どうにも」
「浮かない時に飲む酒はよくない」
「そう言いますが」
「その通りですな」
「酒は楽しく飲むものじゃ」
 あくまでそうしたものとだ、幸村は十勇士達に言った。
「だからな」
「はい、ここは稽古ですな」
「浮かない気持ちならば」
「思い切り汗をかき」
「そして湯に入るべきですな」
「そうじゃ、道場に行き稽古じゃ」
 それをしようというのだ。
「よいな」
「はい、わかりました」
「それでは」
「これより」
「また全員揃っておるしな」
 それだけにというのだ。
「今からな」
「汗を流しましょう」
「共に」
 こうしてだった、幸村と十勇士達は。
 稽古で汗を流しそれで憂いを消した。その頃。
 秀吉は北政所即ちねねにだ、こんなことを言った。
「春になればな」
「その時に」
「花見をしようぞ」
 こう言うのだった。
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