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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百四十七話 和平か、講和か
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して同盟は劣勢な立場にあるのだ。講和条件は当然同盟にとって厳しいものになるだろう……。拒絶すればどうなるか? 戦局を好転させられれば条件は緩和するかもしれない。しかしその可能性は小さい、絶対的に兵力が少ないのだ。おそらく戦局は悪化し講和の条件はより厳しいものになる、いや講和そのものが必要とされなくなるかもしれない……。

「アルテミスの首飾りが役に立たないと同盟市民に伝えるべきではありませんか?」
私の言葉にトリューニヒト議長が“うーむ”と唸り声を上げた。判断がつかない、そんなところだろうか。

アルテミスの首飾りが役に立たない……、亡命者から得た情報だ。帝国内で発生したカストロプの反乱において首謀者マクシミリアンは、アルテミスの首飾りを使って惑星カストロプを防衛しようとした。

しかし反乱鎮圧に向かったヴァレンシュタイン元帥の前にあっけなく破壊されたのだという。ただ、どのようにして破壊されたのかは分からずにいる……。政府がこの事実を知ったのは帝国の内乱が終結し、捕虜交換を控えた時期だった。そしてこの事実は同盟市民には公表されずにいる……。

捕虜交換前に公表すればどのような騒ぎが起こるか分からない、捕虜交換をスムーズに終わらせるためには事実を伏せざるを得なかった……。
「捕虜交換は無事に終了しました。今なら公表しても問題ないでしょう。むしろ和平交渉を進めるには公表した方が良いと思います」

アルテミスの首飾りが無力と分かれば、何かと煩い議員達もハイネセンの同盟市民も多少は考えるだろう。連中の強気も自分達が安全だと思えばこそだ、自分達が安全ではないと分かれば少しは大人しくなる。

「そうだな、次の最高評議会で話してみよう。反対する者もいるだろうが、いつまでも隠し続けるのは危険だ」
自分を納得させるような口調だった。
「他には、何かあるかね」
「フェザーンとの連携を強めるべきだと思います」

トリューニヒト議長が無言でこちらを見ている。私がフェザーンの占領をより強力な物にするべきだと進言していると思ったか……。
「フェザーンを自由惑星同盟に組み込めと言っているのではありません。フェザーンの中立を尊重し対等の立場で堅密な関係を結べと言っているのです」
「対等の立場か……」

議長が眉を寄せて呟く。なかなか難しい事だと思う、しかしこれは必ずやらねばならない。これなしでは対帝国戦において更に不利な状況で戦わざるを得ないのだ。

「同盟政府はフェザーンの中立を尊重し、その関係を堅密なものにする。帝国が攻めてきたときには、帝国はフェザーンの中立を侵そうとしていると非難することでフェザーンを味方につけるのです」
「……」

「そして我々の後方支援をして貰うか、或いは帝国に占領された後はサポタージュ等で攪乱して貰います
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