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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百四十七話 和平か、講和か
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前提とした和平を考えるべきではないかと私は考えています」

トリューニヒト議長は黙って私を見ている。そしてしばらくしてから“戦いを前提とした和平か”と呟いた。
「それは講和という事かね、アイランズ君」
「そうです」

きりきりと痛いような圧迫感が身を包む。何か話すことで忘れようとした時だった、議長が大きく息を吐く、部屋から圧迫感が消えた……。
「戦争が起きれば同盟は六から七個艦隊の動員が精一杯です。帝国は控えめに見ても二十個艦隊は動員するでしょう。三倍の兵力です、勝つのは難しい。そうなれば同盟市民も和平を、講和という和平を考えるはずです」

同盟市民は帝国に勝てると思っているだろうか? 答えは否だ。しかし皆現実を見ないようにしている。そして自分に都合の良い部分だけを見ているのだ。都合の良い部分とはイゼルローン、フェザーンの両回廊を押さえている事。帝国が当面は内政に専念するであろうことだ。だから同盟は安全なのだと思っている。帝国が攻め寄せるまでに体制を立て直せると信じている……。

見たくない現実から目を背け、見たいと思う願望を現実として今日を生きている。それが今の同盟市民だ。我々が彼らの目を現実に向けさせるのは至難と言って良いだろう。帝国が大軍をもって攻め寄せてきた時、その時になって同盟市民は自分達が現実を拒否し願望を現実として認識していたと理解するに違いない、現実が見えれば同盟市民は戦争よりも和平を選択するだろう。

クーデターを考えた連中はそれよりは少しましだった。連中は帝国の攻勢が必至だと見ていたのだ、早期に帝国軍が押し寄せてくると。しかしましなのはそこまでだ。そこから考えたのはフェザーンを占領して富を毟り取るというまるで山賊の様な発想だった。

「講和か……。戦争が始まる前に和平を結ぶのは無理か……」
議長の眉間に皺が寄っている。
「無理、とは言いませんが難しいと思います。より現実的なのは戦った後の講和でしょう。我々は和平と講和、両方を考えるべきです」
トリューニヒト議長が唸り声を上げた。

「しかし、戦いが始まればこちらが圧倒的に不利だ。講和と言っても降伏に等しい様な物になるのではないかね」
「……確かに、その危険性は有ります。同盟軍はイゼルローン、フェザーンの両方面で帝国軍と最悪でも膠着状態に持ちこまなければならない……。そうでなければ城下の盟をさせられてしまう……」

私の言葉にトリューニヒト議長が溜息を洩らした。同盟軍にとって余りにも厳しい条件だ、二つの回廊を最大でも七個艦隊で守らなければならないのだ。どちらか一方が突破されれば、ハイネセンまで帝国軍を妨げるものは無い。溜息を吐くのも仕方がないと言える。

議長が和平にこだわるのもそれが有るからだろう。戦争は始めるよりも終わらせる方が難しい。ま
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