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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百四十七話 和平か、講和か
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ではない……。

「……例の連中は?」
私の言葉にトリューニヒト議長が顔を顰めた。席を立ち私の方に近づいて来る。そして私の正面に座った。
「直接は絡んでいない様だ、だが連中と親しくしている軍人、財界人がクーデターに関与している事が分かっている」

財界人? フェザーン占領を望む財界人がクーデターに参加したことは分かっている。しかし地球教と親しくしている財界人?
「軍人は分かります、連中は主戦派とは近しい関係に有る。しかし、財界人とは……」
私の問いかけにトリューニヒト議長も困惑した表情を見せた。

「私も不審に思っている」
「……」
「……君は知っているかな、レオポルド・ラープがこの国でフェザーン成立のために資金を調達したという話を」
躊躇いがちに議長が問いかけてきた。声も小さい、こちらの声も自然と小さくなった。

「ネグロポンティから聞いております。ヴァレンシュタイン元帥が知らせてきたという話でしょう」
議長は頷くと言葉を続けた。
「もしかするとその時協力した者達の末裔なのかもしれん……」
「まさか……」

トリューニヒト議長の顔をまじまじと見た。議長もこちらを見ている。困惑した様な表情だ。
「まさか……」
もう一度同じ言葉が出た。

「分からん……、分からんよ、真実は。これまで地球教はフェザーンを隠れ蓑にして行動してきたからな。直接地球教が動くとは思えん、もしかするとだ……」
「……」
考え込んでいると議長の小さい声が耳に入ってきた。

「帝国からも地球教とクーデターの関わりについては念入りに調べてくれと要請が来ている。……要請が来たのは二月の二十日だった」
「!」
思わず議長の顔を見た。トリューニヒト議長は嘘ではないと言うように頷く。

二月の二十日……。ネグロポンティを始めとしてクーデター関与者が逮捕されたのが十九日だった……。
「帝国には事前に知らせたのですか?」
トリューニヒト議長が首を横に振った。

事前には知らせてはいない……。にもかかわらず翌日にはクーデターと判断し地球教の関与の調査を要請してきた……。背中に嫌な汗が流れるのが分かった、未だ三月だというのに……。
「油断出来ませんな、恐ろしいほどに鼻が利く」
「手強い相手だ、君もこれからは連中の恐ろしさを十二分に知る事になる」

お互い顔を見合わせて黙り込んだ。議長室には結婚式の映像が流れている。リヒテンラーデ侯が何か野次を飛ばし皇帝が笑い出した。話題を変えた方が良いだろう。

「和平交渉は上手く行きそうですか」
私の言葉にトリューニヒト議長が首を振って苦笑を漏らした。
「上手くいかんな。まあそう簡単に上手くいくとは思っていない、現時点では和平の可能性は低いだろう……。しかし、だからと言って諦めることは出
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