明けちゃったけど正月の騒ぎ・その5
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ばせた。
そこから提督は巻き込まれた騒動のあらましを、かいつまんで元帥に話して聞かせた。本土での視察の話、そこで聞いた元帥の失脚……そして放たれた提督への刺客の話。そして刺客の正体が、過去に提督が沈めた記憶を保持した『加賀』であった事等を……である。
「ふぅむ……要するにお前さん昔の女に刺されたんじゃな。何人も浮き名を流しておると、どこで恨みを買うか解らんもんじゃのぅ!」
提督が刺されたという件では、楽しそうに、心底楽しそうにケラケラと笑う元帥。そんな元帥の姿に青筋をひくつかせているのは、提督の横に座っている加賀だ。ただでさえ自分の同型艦……それも、過去に同じ人物に仕えた艦娘が刺したというので加賀はやきもきしていたのだ。それを煽るような元帥の言動に加賀は苛立ちを覚えていた。
「確かになぁ。俺も知り合いの何人かには刺されないように気を付けろ、なんて言われて笑い飛ばしてたが……マジで刺されるなんて思って無かったよ」
そんな加賀の苛立ちを知ってか、苦笑混じりに元帥に返す提督。自分は怒ってないから気にするな、と態度で見せる事により、加賀の矛を納めさせたのだ。
「しかし……なんとも夏目漱石の小説の世界のような話だな」
とは三笠の談。夏目漱石の小説の中にも、男女関係の縺れから刃傷沙汰になる、という話があるのだ。
「事実は小説より奇なり、って言いますからねぇ。それより、ゴタゴタは決着付いたのかよ?」
提督も独自の情報網で調べてはいても、騒動の中枢にいた元帥本人に聞くのが一番確実だろうと考えたのだ。
「あぁ、それに関しては抜かりは無いわい。不穏な分子は『片付け』させて貰った」
「お〜お〜、70過ぎのジジィの口から出る台詞じゃねぇぜ。くわばらくわばら」
提督が茶化すように言うと、再び黙り込む元帥。
「……そう、それよ。儂も長く元帥の椅子に座りすぎたし歳も老いたし衰えた。今回の謀略に気付けんかったのが何よりの証拠。そろそろ引退しようかと思うてのぅ」
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