暁 〜小説投稿サイト〜
提督はBarにいる。
明けちゃったけど正月の騒ぎ・その5
[2/3]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
まぁやる事も無ぇしなぁ。通してくれ」

 大淀はコクリと頷くと、お通しするようにと電話口に応答。電話を切ると間宮の所にかけ直し、お客様の分のお茶とお茶請けを注文した。こういう所が大淀のマメな所だ。さて、来客とは誰だろうかと予想しながら茶を啜っているとコンコン、と執務室のドアがノックされる。

「どーぞー」

 と、気の抜けた返事をすると

「なんじゃ、刺されたというからもう少し大人しくしておるかと思えば……思いの外元気そうじゃのぅ」

 と、聞き覚えのある嗄れ声が。思わずそちらに顔を向けると、口に含んでいた茶を噴き出しそうになった。

「ジ、ジジィ!?何やってやがんだこんな所で!」

 どうにか口の中身を飲み込んで、声を上げた。嗄れ声の主はと言えば、

「なんじゃい、ご挨拶じゃのぅ。これでも儂、海軍のトップでお前さんの上司なんじゃがのぅ」

 とカラカラと笑っている。その3歩程後ろには、いつものトレンチコートに白い軍帽、そして腰には愛刀を佩いた艦娘……いや、元艦娘の三笠の姿があった。彼女も2人のやり取りが可笑しかったのか、クスクスと笑っている。『提督はBarにいる』を長らくご愛読の皆様ならもうお分かりだろうが、提督の上司であり海軍のトップ。そしてこの度の陰謀によって失脚させられかけた元帥夫妻がアポ無しでやって来たのだった。

「立ち話もなんですから、どうぞ」

 座ったままではあったが、加賀が元帥に席を薦めた。提督は唖然としていて忘れてしまっていたのだ。元帥と三笠が着席すると、すかさず間宮がお茶とお茶請けを2人分運んできた。3人のお茶のお代わりもあるのか、急須もお盆に載っている。

「ごゆっくりどうぞ♪」

 そう言って退室していく間宮さんを見送ると、静寂に包まれる執務室。室内には、大淀が走らせるペンのカリカリという音だけが響く。

「……で、何か用か?」

 口火を切ったのは提督。知人であるとはいえ仮にも海軍のトップである元帥が、おいそれと本土を離れて視察に来られる訳がない。何かしら重要な話があるのだろうと当たりを付けたのだ。

「……いやなに、今回の騒動ではお前さんにも随分と迷惑を掛けたからのぅ。怪我の具合を確かめに来たのと、詳しい話を聞きたくてな」

 ハッキリとした物言いが多い印象だった元帥が、珍しく言葉を濁した。提督もそのただならぬ様子におや?とは思うが口には出さずに続ける。

「んだよ、あんまり思い出したくもねぇ話なんだがなぁ。『昔の死んだオンナが化けて出てきて、脇腹刺されて死にかけました』なんてよ」

「おぉ、そうじゃそうじゃ。その辺の話が聞きたかったのよ」

 わざと冗談めかして提督が言うと、言葉を濁して悪くなった場の雰囲気を払拭しようとしているのか、元帥が顔を綻
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ