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艦隊これくしょん 災厄に魅入られし少女
第一話 因縁のある者達の再会
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そう言うと、椅子から立ち上がって時雨のあとをついていく。その後ろから防空棲姫が宙を浮かびながらついてくる。
凰香は時雨のあとに続いて旧泊地を出ると、坂道を下って浜辺へと降りていく。すると凰香の目に入ったのは、浜辺に倒れている二人の人物だった。一人は肩が露出した白い巫女風の着物に赤いミニスカート、黒色のロングブーツに黄色いカチューシャのようなものを付けた腰辺りまで伸びている灰色がかった黒髪の女性で、もう一人は時雨と似たような服装の、横が獣耳のように跳ね先が赤く染まった金髪の少女だった。
それぞれ背中に主砲や煙突などの艤装を装備していることから、凰香はこの二人が時雨と同じ艦娘であることを一瞬で理解した。
二人とも激しい戦闘を行ったのか、服はあちこちが破けて肌から血が滲み出ており、艤装はかろうじて原形を留めているもののかなり損傷が激しかった。それでも胸が上下していることから、二人はまだ生きているようだった。
すると、二人の艦娘を見た防空棲姫が急に真剣な表情になって凰香に言ってきた。

「………凰香」
「どうしたのよ、急に」
「心して聞きなさい。………こいつが『あの日』あなた達を砲撃した艦娘、金剛型高速戦艦の三番艦『榛名』よ」
「……!」

防空棲姫の言葉を聞いた瞬間、凰香は衝撃を受けた。そして榛名と呼ばれる女性を見る。

(こいつが皆を………)

そう思った凰香は拳を強く握り締める。表情は変わらず本人も自覚していないが、凰香は激しい怒りを抱いていた。その証拠に、凰香の右腕に付けた籠手からは赤いオーラが漏れ出していた。
凰香は今すぐにでもこの二人、特に凰香と防空棲姫を砲撃した榛名に復讐したかった。
それを感じ取ったらしく、時雨が言った。

「………凰香、君が望むのなら僕がこの二人を沈めるよ」

そう言った時雨の目は先ほどとは打って変わって非常に冷たく、両手には刃渡30cm以上のコンバットナイフが握られていた。
時雨は凰香のためならたとえ姉妹艦であろうと容赦なく沈めるほど冷酷になれるのだ。
凰香はしばらく榛名ともう一人の艦娘を見つめていたが、小さなため息を吐いてから防空棲姫と時雨に言った。

「………復讐はしない」
「どうしてだい?こいつらは君の両親と友人の仇なんだろ?」
「簡単なことよ。こいつらを殺したって皆生き返らないし、逆に余計に虚しくなるだけ。それにここでこいつらを沈めれば、こいつらの仲間が私達を殺しにくる。復讐は『復讐』しか生まないわ」

凰香は時雨にそう言った。これこそが凰香が復讐をしない理由である。憎しみは新たな憎しみを、復讐は新たな復讐を生む。そうすれば凰香と同じような境遇の人物が現れてしまうかもしれない。感情を失ってしまったとはいえ
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