Side Story
少女怪盗と仮面の神父 38
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私を殺したら、それこそみんなに憎まれ、嫌われてしまう。
(ごめんね、私。怖いよね。苦しいよね。でも、もう少し頑張って。ここで折れたら本当に取り返しがつかなくなる。私にみんなの気持ちを護らせて)
「なにも……あなたには何も護れないよ! 生きてたって、今までみたいに関わってくれた人達を不幸にするだけ! まだ殺し足りないの??」
(そりゃあ、生きてても迷惑しか掛けられないかも知れないし、これまでのことも含めて、具体的にどうしていけば良いのか全然分からないけど。ただ一つだけハッキリしてるのは、私が死んだらハウィスが泣くってことだよ)
両腕を掴んでやんわり下ろすと、目を真ん丸にした自分が息を呑んだ。
(ハウィスを泣かせて、嬉しい?)
「嬉しくない!」
(悲しませたい?)
「ぜっったいに、嫌??」
(うん。私は嫌だ。ハウィスが苦痛に苛まれる姿なんて、考えたくもない)
「でも……っ!」
それも結局、自分勝手な我がままだ。
泣かせたくなくて、生きて、今はそれで良いとしても。
近い将来、助けなければ良かったと後悔させるかも知れない。
顔も見たくないほど嫌われるかも知れない。
人間の心は、常に不安定で。
一生同じではいられないのだから。
(そうだね。嫌われるかも知れない。恨まれるかも知れない。でも私は……仮定でしかない未来に絶望するより、今ここにある確かな想いを選ぶよ)
「…………!」
うつむき気味で視線をさ迷わせる自分の肩を、強く、強く抱きしめる。
ネアウィック村の海岸でハウィスと出会った、あの時と同じように。
どうか……どうか、伝わって。
今も私を温めてくれてるハウィスの気持ちを、どうか受け入れて。
(ハウィスは生きてる。アルフィンも、マーシャルさんも、ベルヘンス卿もエルーラン王子も。みんな、まだ生きてるの。だから、お願い)
赤黒いこの世界を、現実なんかにさせないで。
(みんなを……ハウィスを助けて。助けさせて。お願い、私)
目覚めてすぐに悪行の報いを受けるとしても。
ここで。
こんな形で。
死に逃げさせないで。
「……ウィ、ス……」
腕の中の自分が震え出した。
ミートリッテの肩に、温かい雫がパタパタと落ちて……
「ハウィス───────っ??」
幼い叫び声と共に、世界が色を失い。
輪郭を、変えた。
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