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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 38
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を噛みしめ。
 見えない何かに押さえられた全身、伸ばした腕を、無理矢理に動かす。
 まずは人差し指。
 次は親指。

「! なんで??」

 徐々に大きくなるミートリッテの動作を見て、幼い自分が慌て出した。

「あ、諦めてよ! あなたは生きてちゃいけないの! あなたが生きてたらみんなを不幸にするの?? だからっ……」

(い、いえ…… いいえ、違う!)

 五指が動く。
 手首が、肘が、肩が。
 自由を取り戻していく。
 反対に、ミートリッテの首を絞めている自分がうろたえ始める。

「違わない! お父さんもお母さんもハウィスも、みんな死んじゃった! あなたのせいで死んじゃったんだもん! あなたも死ななきゃダメなの??」

 死んで、ない。
 誰も……私も……!

(これ以上、死なせてたまるかぁぁあああああああああああああああっ??)

 上半身が。
 腰が。
 両膝が。
 足首が。
 意思を通して、勢いよく立ち上がる。

「ひぅ っ……!」

 手を外された弾みで、小さな体が背中から吹っ飛んだ。
 ぬかるんだ地面をゴロゴロと転がった後。
 ガバッと身を起こして片膝立ちの姿勢になる。

 一頻(ひとしき)り咳き込んだミートリッテは……一歩、自分に近付く。

「や……っ! 嫌だ! 来ないで!」

 震える両腕を顔の前で交差させて怯える、幼い自分を見下ろし。
 荒い呼吸のまま……微笑む。

(ダメなんだよ、ミートリッテ。みんなを苦しめてきたからこそ、私には、私を諦める権利が無いの)

 もう一歩。また一歩。

「単にあなたが生きていたいだけでしょう?? 自分が気持ち良く生きる為の言い訳に、みんなを利用しないで!」

(しないよ。私は生きたい。図太く醜く、意地汚く諦め悪く。これからも、生きていきたい)

「…………??」

 自分との距離は、あと一歩。
 ミートリッテも両膝を突いて、幼い自分と目線を合わせる。

(うん。みんなが居ない世界なんか嫌だ。私のせいでみんなが苦しんでたと聴かされて、こんな筈じゃない、なんでこうなるの、もう嫌だと思ったよ。でもね。思い出したんだ。どんなに嫌になっても、私は自分を投げ出しちゃダメなの。絶対にそれだけはできない。だって)


貴女が傷付いたら、貴女を愛する人がどれだけ嘆き悲しむと思ってるの? 死ななきゃ良いってもんじゃないのよ?


(私は、私だけのものじゃない)

 私には、私が大切に想う人の数だけ……もしかしたら、それよりももっとたくさん、私を大切に想ってくれてる人達がいる。
 私が私を憎み、諦め、手放すということは、彼らの気持ちを蔑ろにして、与えられてきたすべてを裏切るということだ。
 私が
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