Side Story
少女怪盗と仮面の神父 38
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事をくれたピッシュさんも、子供っぽい軽口でやり取りしてくれたヴェルディッヒも、ずっと幸せでいて欲しかったアルフィンも、大好きなハウィスお母さんも」
みんなみんな、自分勝手なあなたが殺したの。
何も知らずに巻き込まれた商人達も。
海賊だなんて嘘を吐いてまで、あなたを正そうとしてくれた騎士達も。
身を呈して護ってくれたマーシャルさんや、ベルヘンス卿も。
義賊を匿ったせいで職権濫用の罪を背負ったエルーラン王子も。
最初からずぅっと手を差し伸べてくれていたアーレスト神父も。
あなたのせいで殺され、ひとまとめに焼かれ、野に棄てられたの。
「ねえ。あなた、あれを見て何も感じないの? 餓えた獣ですら顔を歪めて逃げ出したのに。酷い人。本当に知性と理性を兼ね備えた生き物なの?」
異様な雰囲気を釀し出している、山によく似た黒い影。
その凸凹を一つ一つ丁寧に分ければ、人間の形を残した炭になるだろう。
顔も性別も判別できないそれらからぷすぷすと音を立てて昇る黒い煙は。
生者の尊厳を辱めるように、元肉体を、壊れた物体へと変えていく。
何も感じない、わけがない。
込み上げる吐き気と恐怖で心臓が凍り付き。
全身に冷たい汗が吹き出して流れ落ちる。
逸らした目の表面に張り付いた透明な体液が。
自然物も人工物も等しく駆逐された光景に波を立てた。
小さな自分が背を向けたまま、くすっと笑う。
「わざとらしい。それも自分を憐れむ涙でしょ。赦しの言葉をくれる相手が居ないから、反省するふりで自分を赦そうとしてるんでしょ?」
実際には、憎まれようが恨まれようが、死人に口無しだもんねぇ?
偽りの優しい記憶で過去を塗り替えて。赦してもらえた気分になって。
これからも楽しくのうのうと生きていきたいんでしょ?
つくづく卑怯で、最低だわ。
「ほら。その目でしっかり見なさいよ。あなたが産まれた結果を。あなたが生きたいと願った結果を。あなたが自分で考え、選んだ未来の行く末を??」
(やめて……っ)
「どう? これで満足なんでしょう? 自分の為に生きてるあなただもの。自分の為に積み上げられた死体を見て、本当は満足してるんでしょう??」
(やめてぇぇえええええええ??)
ぐさぐさと突き刺さる言葉の槍に耐え切れず。
ミートリッテは両手で耳を塞ぎ、頭を振った。
(満足だなんてそんなこと思ってない! 思える筈がない! こんな結末、私は一瞬たりとも望んでなかった! 私は……私はただ、みんなと……っ)
「はっ。バカバカしい。どうしてお父さんとお母さんはこんな自己中心的で偽善の塊みたいな、くだらない屑を愛して護ってくれてたのかなあ……」
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