63.彼岸ノ海
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か?過去の自分と今の自分の精神構造が100%一致すると断言できるか?一つの質問に二つ以上の答えを導き出した時、お前は複数いるのだ」
「ぜってー屁理屈だろそれ」
「『だがそういうこともあるかもしれない』と一瞬納得しかけた」
「それを屁理屈だっつーんだよ。話が進まないから一応そういうことにしておくけど………ここの俺は随分おべんちゃらがお好きだ」
この場に俺しかいないなら、喋ってるのはどうせ俺というパターンだ。
少し形は違うが、『死望忌願』の時と同一なんだろう。
「で?この気味が悪い程の晴天が照らす白い海岸の中で、俺に何を伝えたいので?」
「――汝に問う。汝にとっての現実とは何ぞや?」
「現実…………………」
現実。現実――舌の上で転がして、頭が停止する。
いや、何を今更疑いを持つことがある。
あの感覚、あの痛みが嘘っぱちや幻影である筈がない。
「俺は黒竜との闘いでぶっ倒れて/ドデカイ地震に巻き込まれて/このわけわからん砂場で問答してて/――………あ……れ……?」
思考が同時に浮かび、そして沈んだ。
「そうれ、見たことか。本当の自分は何処に行った、■■■。いいや、アズライール。それともアズライールは幻想で、本当のお前は存在を見失った名無しの権兵衛か?」
冷静に考えれば――俺がファンタジーの世界で謎の力に覚醒して、死神呼ばわりの大活躍などあり得るのだろうか。挙句二年もろくすっぽ苦労せずに「俺達に未来はいらない」などとクサい台詞を吐きながらヒャッハーして三大怪物の一角と戦った末に友達を助けて力尽きる?これでは痛々しい妄想小説の類ではないか。
なら俺は大地震に巻き込まれて両足欠損、片目失明の死に体で知り合いに看病してもらっているというのか。首都直下地震は以前からニュースでそのリスクが報じられていたのだし、ありうる話だ――。
いや、本当にそうか?被災地できちんとした治療も受けられない状態で、目ん玉と両足の?げた人間が生きているなどと、そんな都合の良いことが起きるだろうか。やはり、漫画かドラマの類だ。
では、今ここにいる俺が全てなのか――絶対にないとは言えない。手前二つのどちらもが現実ではないのなら、そもそも俺と言う存在が既に常世の存在ではなくなっているのかもしれない。俺は既に肉体と言うくびきから解放された意識だけの存在であり、ここは死後の世界なのだ。
だが、そうなのか?あの生々しい現実感と、終着を迎えていない記憶が偽りか欠損のあるものなのか。俺は分裂しているが、すべての時間は同時に進行しているような感覚があるのに、それでもその現実は存在しないのか。
混乱する中で、俺は必死に記憶を遡る。
遡って、遡って、遡って。
「俺は――俺は、面子をやたら気にするだけ
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