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提督はBarにいる。
明けちゃったけど正月の騒ぎ・その4
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合わせがしたいのだが……」

「構いませんよ。大淀、金剛……行くぞ」

 国王に促されるまま、SPと連れ立って歩く。その間誰も言葉を発しない。やがて1室に通されて、4人は腰を下ろした。SPは室内に入らず、部屋の前を固めるだけ。その対応から見ても、提督の信頼性が窺える。

「しっかしよぉ……何だよあの挨拶は!お陰で俺ぁ面倒なのに取り囲まれたんだぞ!?」

「し、仕方なかろう?私だってあんな連中は好かんのだ」

 開口一番、国王に対して文句を垂れる提督。とんでもない国際問題に発展しそうな一幕だが、その問題はない。何故ならば、この二人は十数年来の知り合いであるからだ。

 国王がまだ皇太子であった頃、お忍びで鎮守府のある街を視察していた時の事。街中でトラブルに巻き込まれていた皇太子を救い出したのが、たまたま休暇中の提督であったのだ。以来、何かと懇意にさせて貰っている。互いに重要なポストに座っている者同士、そのコネクションの有用性は高い。

「陛下、先日はご助力頂きましてありがとうございました」

「何、気にするな。レイジに居なくなられて困るのは私の方でもあるからな。あの位の事で良ければ協力させて貰う」

「あの程度ってなぁ……『日本への石油資源輸出差し止め』があの程度で済む話かよ?」

 提督は可笑しそうに肩を揺らしながらクスクスと嗤う。昨年の話になるが、金城提督が更迭されかけて鎮守府の戦力も接収されそうになった『騒ぎ』があったのだ。その際に大淀が協力を仰いだのが誰あろうブルネイ国王。その強権で以て『金城提督の更迭を撤回しなければ、石油資源への禁輸措置を取る』と日本政府に通告したのだ。

 何しろ深海棲艦の進出によってシーレーンはガタガタ、中東やアメリカ等からの輸入は絶望的となった。そんな中でブルネイは東南アジア内でも稀少な原油・LNG(液化天然ガス)の産出国である。当然ながら日本から政府はその資源に縋りつき、戦線維持と海域の安全確保を交換条件にして来たる南方進出の為の橋頭堡とするべく、ブルネイに泊地を置いたのだ。やがて艦娘の量産化計画の本拠地とされ、何度かの襲撃をくぐり抜けた後、今の金城提督が着任している。

 そんな大動脈とも言えるブルネイの石油が差し止められる。とある経済学者は『石油は国家の血液である』と表現した。それほど石油資源というのは近代国家を動かすのには必要不可欠な物になっている。それが止まってしまう……それは国の『死』に直結する。泡を食ったのは日本政府。鎮守府の長とはいえ、一個人を助ける為に国王自らが動くなど全くの想定外だったのだ。

「ありゃあ外交って言わねぇぞ。『恐喝』ってんだ」

「どちらにせよ、レイジが居なくては日本までの石油の安全は確保出来んのだ。同じことであろう?」

 2人は
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