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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百四十五話 華燭の宴 
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しかも女子のアイドルグループ、ヘソ出して腰振って踊っている連中の歌だ。そんなのメルカッツやシュトックハウゼンに歌わせるなよ、爺さんども生真面目な顔をしていたが内心では頭を抱えていただろう……。黒真珠の間は爆笑だった……。

俺とユスティーナはずっと雛壇だったが、これがまた苦痛だった。ひっきりなしに祝いの言葉を言いに来る奴が居るんだ。彼らのおかげで碌に食事が摂れなかった。彼らは写真を撮って酒を注ごうとする。俺は酒が飲めないから全部ジンジャーエールで応対した。

ユスティーナは二口三口くらいはシャンパンを飲んだだろうがその後は彼女もジンジャーエールだった。というか俺が飲むなと言った。空きっ腹にシャンパンなんて碌なもんじゃない。酔っぱらった花嫁なんて洒落にならんからな。それで失敗したカップルは幾らでもいる。

披露宴が終わったのが二時、さあ帰ろうかと思っていたらリヒテンラーデ侯がまだ帰るなと言う。三時から観劇だと言うんだ。はあ? と思ったよ、何で披露宴の後に観劇するのって。でも爺さんは頑なだった。何でもこの観劇も結婚式の一部として放送されるらしい。辺境開発の費用捻出のために我慢しろとか言い出す。汚いよな、年寄りは。殺し文句を心得ているんだから。

題名は「シャンタウ」、聞いたことが無いし妙な名前だと思ったら新作だと言う。内容はイゼルローン要塞陥落後からシャンタウ星域の会戦までを壮大に演じた(俺の言葉じゃない、爺さんの言葉だ)劇らしい。帝国歌劇団がシャンタウ星域の会戦後から構想を練り一年かけて台本を作った。それをこの結婚式で初公演するのだと言う。

良いのかよ、それ。そう思ったね。あの戦いはフェザーンと同盟をコケにしまくった戦いだ。それを劇にして全宇宙に流す? 同盟とフェザーンで暴動が起きかねない、冗談で済む話じゃないんだが爺さんは平気だった。暴動が起きた方が劇の評価が上がるだろう、なんて言っている。

正気か? と思ったがどうやら皇帝が見たがっているらしい。結局休憩一時間、夕食の時間だがそれを入れて六時間を観劇で過ごした。終わったのは九時を過ぎていたな。ようやく帰れると思ったらインタビューとか言われてさらに一時間拘束された。終わった時はへとへとだった。

劇の内容については……、思い出したくない。


……あの六時間だけ死んでれば良かった……。



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