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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百四十五話 華燭の宴 
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婚式じゃなく俺の葬式かと思ったほどだ。

“軍服で構わんがの、マントとサッシュはこれにせよ”
そう言うと取り出したのはコバルトブルーのマントと白のサッシュだった。俺がそんなのは嫌だと言うと、さも嫌そうに俺のマントを人差し指で突いた。
“結婚式じゃ、黒のマントなぞ論外、そのくすんだサッシュもな。全宇宙に放送するのじゃから少しは見栄えを考えんと”

くすんだは無いだろう、くすんだは。渋いと言ってくれ。まあ確かに地味かもしれないが、これは俺のお気に入りなんだ。それを白のサッシュ? おまけに赤で縁取りしてある……。ラインハルトだってこんなの身に着けていなかった。溜息が出た。

俺が納得したと見たのだろう、爺様は今度は靴を差し出した。靴は問題ない、今履いている靴はちゃんと磨いてある。だが爺様の出した靴はただの靴じゃなかった。シークレットシューズだ、一見普通のシューズに見えるがヒールが五センチ近くある。俺が唖然としているとジジイは益々ニヤニヤ笑いを大きくした。お前、本当に貴族か? どう見ても時代劇に出てくる性悪ジジイ、代官とか廻船問屋の越前屋にしか見えん。

“新婦はハイヒールを履いてティアラを付ける。そうなると卿よりも背が高く見えてしまうでの、それでは少々バツが悪かろう。そこでの、これじゃ、のう、なかなかのものじゃろう”

そういうと爺さんは“ホレ”と言って靴を俺に押し付けた。……悪かったな、どうせ俺は背が低いよ。ユスティーナはハイヒールを歩き辛いと言って好んでいない。多分彼女は式でハイヒールを履くのを嫌がったはずだ。それを無理やり履かせたんだろう、俺にシークレットシューズを履かせて笑うためにだ。この糞爺、お前みたいなのが居るから世の中から争いが無くならないんだ。地獄に堕ちろ、サタンの弟子めが。

式が始まってからも酷かった。ユスティーナはヒールの所為で転びかけるし俺は彼女を支えようとしてもうちょっとでぎっくり腰になるところだった。付添いの女官が“優しい旦那様で良かったですね”なんて言っていたが、当たり前だろう。俺が支えたから、何ともなかったから美談で済むがあのままこけたり、ぎっくり腰になったりしていたら銀河の笑いものになるところだった。危ないところだったよ。

ミュッケンベルガーは花嫁の父を演じていたが、ガチガチになっていた。いつもの威厳のあるミュッケンベルガーなんてのは欠片もなかったな。養女でも娘は可愛いらしい。もしかするとガチガチになっていたのは神父が皇帝だったからか? まあ分からないでもないが頼むから俺を睨むのは止めてくれ。俺はユスティーナを誑かした覚えは無い。

それにしてもフリードリヒ四世にも困ったもんだ。よりによって神父なんだから。最初は分からなかったが、妙に神父が上機嫌だと思って良く見たら皇帝だった。何考えてんだか…
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