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ソードアート・オンライン〜Another story〜
マザーズ・ロザリオ編
第243話 譲れない想い
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に掛かれない程の速度だった。
だが、それでも『相手が悪い――』と言わざるを得ないだろう。
この男が相手にしているのは、不敗神話を作り上げようとしてきた《絶剣》と《剣聖》だ。
その内の1人――剣聖の連勝記録は、確かに途切れたかもしれない。だが、それでも色あせる事のないインパクトを残している。
この場で彼女達に、彼女達の神速の剣に敵うものなど――。
「うおおおお!!」
いない。
キィンッ! と言う甲高い金属音が響く。
ユウキの身体を飛び越える様に跳躍したランが、華麗な身のこなしで、戦斧を弾いた。
通常であれば、重量の重い武器が打ち勝つ様に出来ているのだが、それを簡単にはじいて見せたのは、恐るべき速度と、正確な剣閃だと言える。そして、何よりも……全て視ている眼。武器の弱点を見極め、最善に打ち取る正確さ。それがあるからこそ、簡単に華奢な細身の剣でも弾けた様に見えてしまうのだ。
何度も見た事があるからこそ――、息をのんで見守っていたレイナやアスナの2人は感じ取る事が出来た。
「ぐはっ……!!」
「ぐぅっ……!!」
2対2になったとしても、止められない。
もし――、彼女達の2人に対抗できる2人がいたとすれば……、アスナとレイナには、この世で一組しか考えられなかった。
そして当然ながら、2人は叩きのめされてしまった。
倒れこんで、現在のHPの残を確認。想像以上に削られている。既にレッドゾーンと言う状態だ。防具も現時点で強力な装備をしている、と言うのに、あの一瞬の間にやられてしまった。その事に驚愕したのと同時に、表情が憤激へと変わった。
「き、きったねぇ……! 不意打ちしやがって……!」
「こ、の……! 卑怯モンが……っ!!」
射殺すかの様な視線を向けつつ、やや的外れ……、いや 完全に的外れな罵りが続く。
その物言いに、思わず首を傾げるユウキとラン。正々堂々正面切っての戦いだった筈だから、意味が判らない様子だった。
――今ののいったいどこが不意打ちなの?
不意の相手に襲い掛かる事が不意打ちだ。だしぬけに相手の予期しない事……と言う意味もあったと思えるが、確かに2人の超絶的な動きは、予期できない、と思えるが 極めて正々堂々だと言える。武器を構える事まで催促したのだから。
完全な負け惜しみ、と思って 思わず口にしかけたが、直ぐに噤んだ。
2人の男が倒された事を目の当たりにした、他の前衛メンバー達が完全に戦闘モードに切り替えたからだ。固まっていたのが、ばらばらと回廊いっぱいに広がって、次々と武器を抜いた。
「お姉ちゃん……!」
「うんっ……!」
アスナとレイナも、少しばかり遅れたが、皆の心に従った。
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