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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百四十三話 今日は……
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が……、俺が直接会って決めるべきだろうな。妙な奴にやらせるとリンチはまたアルコール依存症に戻りかねん。扱いには注意しないと……。

「司令長官閣下」
声がしたので顔を上げると目の前にビューローがしゃちほこばって立っていた。手には書類を持っている。その書類を俺の方に差し出した。何か動きがぎこちないんだよな。

「この書類をお願いします、ミッターマイヤー閣下より司令長官閣下にお渡しするようにと言われました」
書類を受け取る。他でもない、ビューローの研修の申請書だ。問題ない、サインして既決箱に入れた。

「閣下、お気に留めて頂いて有難うございます」
四十五度で礼をしやがった。何か言って雰囲気を変えないといかんな。先ずは天気の話で行くか。

「気にしないで下さい、今日は……」
「はっ、今日は?」
「……何でもありません」
今日は雨だった、次の書類を見よう。俺が書類を手に取るとビューローは敬礼して部屋を出て行った。どうも上手くいかない……。



帝国暦 489年 2月 27日  オーディン    宇宙艦隊司令部  フォルカー・アクセル・フォン・ビューロー



司令長官室を出るとどっと疲れた。思わず壁に寄りかかって深呼吸したほどだ。そんな俺を何人かの女性下士官が不思議そうな顔をして見ている。分からないだろうな、この気持ちは。帝国最大の実力者に疎まれているかもしれないなんて……。

ウチの司令官は気楽でいいよな、俺の研修なんて全く考えてないんだから。ロイエンタール提督はちゃんとベルゲングリューンの事を考えてくれてるのに……。お前が羨ましいよ、ベルゲングリューン。

おまけにそれを司令長官に指摘されるなんて……。ミッターマイヤー提督は“やっぱり司令長官は卿の事を気にしているのだな、羨ましい事だ”なんて笑顔で言っているが全然羨ましくない。お前は司令官にも忘れられている哀れな奴だ、と司令長官に笑われている気分だ。

おまけに司令長官は難しい顔で書類を見ているし最悪だ。最後に何を言おうとしたのだろう。“今日は……”、今日は何だったのだろう? 気分が良くない? 笑わせてもらった? 不機嫌そうな顔だったからな、まさか俺の顔を見て今日は厄日だと思ったんじゃ……。溜息が出た、厄日だ、本当に今日は厄日だ……。




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