File.2 「見えない古文書」
\ 6.15.AM.9:21
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に…伯母様は力を使わなかったんだ。力を使えば、それは周囲にまで大きな影響を及ぼしてしまうから…。だから…伯母様はこれを最後にしようと決めたんだろう。自らの人生の幕引きとして、この一件の解消を選んだんだ。自分の子供ため…そして、これから生まれるであろう新たな命のために…。」
そう言う櫪氏の目からは涙が溢れていた…。
暫くは崩れ去った如月家をやりきれない思いで見ていたが、その思いを断ち切るように、私達がその場に背を向けた時だった。再び轟音が響いてきたため、私達は驚いて後ろを振り返った。すると…崩れ去った如月家の下から、水が噴水の如く噴き出したのだった。
「地下水が…!」
いや、違う…。よく見れば、そこからはもうもうたる湯気がたっていたのだ。
「相模君…温泉だよ…。こんな場所から温泉が湧き出すなんて…。」
私達は、ただ呆然とそれを眺めた。その湯は全てを洗い浄めるかの如く、町を流るる河へと下る。その中には、館の瓦礫であったり地下の崩れた岩などが混じっていた。
「あれは!」
私と櫪氏は共に駆け出した。流れの中にあったあるもの目掛けて…。そして私達はそれに追い付き、それを地へと引き上げたのだった。
「帰ってこれたね…伯母様。」
「キヌさん…お疲れ様でした…。」
私達が引き上げたのは、キヌさんの遺体だった。あちらこちら擦りむけ、髪は乱れているが…その顔には笑みさえ浮かべていた。
「帰ろう…家へ…。」
櫪氏と私は、もう動くことのないキヌさんを抱え、刑部家へと戻ったのだった。
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