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相模英二幻想事件簿
File.2 「見えない古文書」
[ 同日.PM.5:46
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たんですか?」
 私が不思議そうに問うと、櫪氏は背負っていた木乃伊をゆっくりと降ろして言った。
「その古井戸…二人埋まってるんだ。信太郎氏がそう伝えてくれたよ…。」
「えっ?その木乃伊…がですか?だけど…埋まってるって誰が?」
「信太郎氏の…妻と息子だそうだ…。」
 それを聞いて、私は目を見開いた。それじゃ…あの声…。あの地の奥から湧き出す様な…あの声は…。

- 返してもらう…奪ったものを…今こそ…! -

 私があの声を思い出した時、再び不気味な声がこだました。男性とも女性ともつかない声…。苦しみに喘ぐ様な…あの声が…。
「どうやら…全ての元凶は、屋敷の直ぐ下にあった様だね。この信太郎氏は、この怪現象には全く関係なかったんだ。分かってはいたんだが…これは酷いよ…。」
 櫪氏がそう言うと、その言葉に反応するかの様に古井戸が端から崩れた。そして、中に詰められていた土も外へと崩れ出たが、それは上部だけだ。地面の下になっている部分はそのままになっている。が…そこから得体の知れない何かが溢れている様な気がした…。
「相模君、ここは一旦引くよ。今の我々では荷が重い。ここで信太郎氏が抑えてくれるそうだから、体制を立て直してから来よう。二人の遺骨を掘り出す必要もあるからね。」
「…ここ、掘るんですか…?」
「無論だ。親子三人、共に葬って全てを明らかにすることが、この怪現象を止める唯一の方法だからね。」
 そう言うと、櫪氏は私を促して歩き出した。だが、今度は他方から呻き声が響いてきたのだった…。
「何か…聞こえませんか?」
「そうだねぇ…。これが二番目の歌詞なんだろう。」
 櫪氏はそう言って辺りを見回しながら、続けて口を開いた。
「四つ四角曲がったら、五つ五つの佛様、六つ虚しい血の涙…。少なくとも、五人は殺されて闇に葬られた筈だ。昔から四角はあまり縁起の良いものじゃないからね。狂わすなら四辻、殺すなら宮の下ってね。呪詛にまで使われる程だし。」
「それじゃ…四角って?」
「相模君。この歌詞、四角のどの方向へ曲がったか分かるかい?」
「いや…全く分かりません…。」
「四角を仮に迷っている者そのものだとすれば、その者自体が曲がってしまう…。要するに、悪い方へ動いてしまった結果、とんでもない事態になってしまったってことになるんじゃないかなぁ。」
「…!」
 それじゃ…ここは地獄を喩えた場所…なのか?いや、現実に起きたことを歌詞にしたのだったら、それは…地獄の様なことが起きた場所なのでは…?
 私が嫌な汗をかきながらそんなことを考えている最中、呻き声は徐々に大きくなり、その言葉がはっきりと聞き取れる様になった。

- 腕…わしの腕は…何処へいった…。 -

- 痛い…助けてくれ!腸が…あぁ、溢れ落ちちまう!痛い!痛い! -
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