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相模英二幻想事件簿
File.2 「見えない古文書」
Y 6.14.AM11:38
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た。
 私は岸野さんにロープ二本と電灯を用意するよう頼み、米沢さんにはレスキューと刑部家への連絡を頼んだ。二人は気が動転してはいたが、私がそう言うと素早く動いてくれた。
 私は用意された二本のロープを一際太い柱に固定し、その一本を自分にくくりつけた。一応の命綱だ。一方の綱には等間隔に結び目を付け足掛かりを作ってはみたが…どれだけ意味を成すか…。
「それじゃ、行きます。レスキューが着たら、説明お願いします。」
「畏まりました。相模様も、どうかお気を付けて。奥様とお嬢様をお願い致します。」
 そう言って後、私一人…そのぽっかりと開いた穴へと降りて行ったのだった。
 その穴は意外と深く、それはこの館に地下があったことを示していた。
 その穴を五メートルほど降りただろうか。やっと足が地につき、辺りを調べ始めることが出来た。
 岸野さんが用意してくれた懐中電灯はかなり大きく、それは広い範囲を写し出すことが出来た。そのため、私は然して時間を掛けずに如月夫人を見付け出すことが出来たのだった。
「夫人、大丈夫ですか!?」
 夫人に駆け寄って、私は静かに夫人を抱え起こした。
 すると、夫人はどうにか意識を取り戻し、私を見て言った。
「…七海…七海は?」
 夫人はそう言うと直ぐに立ち上がろうとしたが、立ち上がる前に倒れてしまった。私は慌てて抱え起こすと、夫人の顔には苦悶の表情が表れていた。
「どこか怪我を?」
「どうやら…足が折れているようです…。私はこのままで構いませんので、相模様は七海を探して下さい。」
 私は少し考えたが、夫人の言う通りにすることにした。暫くすればレスキューも来るはずだし、上にある床は崩れそうになかったからだ。声も上げてない七海さんの方が危険な可能性もあるしな…。
「分かりました。では夫人、このまま動かないで下さい。そろそろ助けが来るはずですので。」
 私がそう言った時、タイミングよく上から声が掛かった。
「大丈夫か!」
「すみません!如月夫人が足を骨折したようですので、早く引き上げて頂きたい!」
「分かった!直ぐに向かう!」
 話し終えると、私は夫人に「探しに行きます。」と言ってその場を離れたのだった。
 しかし…どれ程の広さがあるのか…。人工的な太い柱があると思えば、一方には自然の岩が剥き出しになっている。それが懐中電灯の明かりが届かない程奥へと続いているのだ…。
 考えてみれば…火災に見舞われた際、よくこの地下が見付からなかったものだ。まぁ、地下の天井と地上までは数メートルはあるから、基礎が破壊されない限りは大丈夫なのだろうが。
「七海さーん!」
 私は七海さんを呼んではみるものの、人の気配は微塵も感じなかった。そのまま七海さんの名を呼びながら歩いていると、この場に不釣り合いなものが目に入ってきた。
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