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相模英二幻想事件簿
File.2 「見えない古文書」
Y 6.14.AM11:38
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たら…どうしたの一体?熱でもあるのかしら…。」
 如月夫人がそう言いながら娘の額に手を伸ばした時だった。

ガシャンッ!

 突然、食堂の窓ガラスが割れ、床が振動し始めたのだ。
「な…なんですの、これは!?」
 夫人は咄嗟に立ち上がって娘を抱き、床へと倒れるようにして伏せた。
 地震…とは全く異なっている。何せ…天井から垂れるシャンデリアはひと揺れもしてないんだからな…。恐らく、食堂外にいる人達は気付いてないだろう…。
「夫人、七海さん、大丈夫ですか!?」
「は…はい、なんとか…。」
 ひとしきり揺れた後、今度は地の底から湧くような低い声が響いてきた。その声は…あの数え唄を歌っていたのだ…。
「何故…こんなことが…!?」
 この声は夫人にも聞こえるようで、その表情は恐怖で凍り付いていた。無論、その腕に抱かれている七海さんも同様だった。
 そんな中、私はその数え唄を歌う声に耳を澄ました。未だ床は揺れていたが、その声は紛れもなくあの数え唄を歌っている。それも…全ての歌詞を歌い切ったのだ。
 一体…この数え唄に何が秘められているのだろう?現在では歌われなくなって久しいこの唄が、この如月家にどう関係していると言うのだ?
 私は自分が震えているのか、それとも床が揺れているのか分からなくなっていた。この数え唄が、何かとても恐ろしいことを語っているようで、私が無意識に恐怖を感じていたからだ…。
「奥様、お嬢様。どうかされましたか?」
 異変に気付いたのか、食堂へ米沢さんと岸野さんが入ってきた。二人は床に伏せていた私達を見て、不思議そうに見下ろしていた。
「岸野さん…今、地震がありませんでしたか?」
 私に問われた岸野さんは訝しげに首を傾げながら言った。
「いいえ…ございませんでしたが…。」
 まぁ…そうだろうとは思ってたが…。その後、私は直ぐ様立ち上がって夫人と七海さんの所へと歩み寄った。
「大丈夫でしたか?」
「ええ…。ですが、あれは何でしたの?それに…あの恐ろしげな声…。」
「それは…今はまだ何とも…。ですがやはり、この地に伝わっているあの数え唄が、この件に関係しているのは間違いないようですね…。」
「相模様…今度は私にもはっきり聞こえました…。七海の言っていたことは、全て真実だったのですね…。こんな怖い思いをしていたなんて…。」
「母さん…。」
 未だ蒼冷めていた二人だが、何とか気を取り戻して立ち上がった時だった。不意に七海さんの足下の床が崩れ、七海さんがその崩れた床もろとも落下したのだ!
「七海!」
 如月夫人は娘を助けようと手を伸ばしたが、そのせいで七海さんと共に落ちてしまったのだった。
「夫人!七海さん!」
 床に開いた穴は大きく、私はその穴に向かって叫んだ。だが…そこから返事は返ってこなかっ
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