File.2 「見えない古文書」
X 6.13.AM11:14
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も知れない。
「相模様、お話はお済みですか?」
気付かないうちに、如月夫人が目の前へ立っていた。
「あ…すみません。少し考え事をしていたもので…。」
「構いませんわ。でも、私の依頼の件でお悩みならば、何なりと申して下さい。私も伝え忘れもありましょうし、問われて思い出すこともありましょうから。」
如月夫人はそう言って、目の前の椅子へ腰を落ち着けた。
私は話しておかねば厄介なことになりかねないと考え、櫪氏と話したことを率直に伝えることにした。それを伝えてどうこうなるとは思ってないが、夫人には知る権利があるだろう。娘にしろ館にしろ、現在の如月家の当主である夫人は、その全てを知っておく必要があると感じたのだ。
「では…この土地ではなく、如月一族の直系に何かがあると…?」
全てを話し終えると、夫人は神妙な表情をして言った。あっさりと話を受け入れられた私は、何だか肩透かしな気がした。ま、ああだこうだと言い訳を並べるよりはマシなんだが…。
「はい。少なくとも、刑部家のキヌさんはそう言ってました。」
「刑部家の大奥様が…。確か、大奥様は櫪本家から嫁がれた方でしたわね。」
私は一瞬、夫人が何を言っているのか理解出来なかった。要は、私がキヌさんの実家を勘違いしていたのだ…。
櫪家は本家の他に、現在は四つの分家がある。その分家の中に、一つだけ同じ櫪の姓を名乗れる分家があるのだ。
現当主から数え三代前の当主は、実は長男ではない。兄が弟よりも力が弱かったようで、弟へ全権を渡して本家を出たのだ。そこで新たに家を築いたのだが、弟は兄に敬意を表して櫪の姓を名乗ることを許したのだ。本家より東にあるため、今は東櫪家と呼ばれることもある。
私は最初、キヌさんはこの東櫪家出身だと勘違いしたのだ。本家の娘が、まさか何の力もない刑部家へ嫁入りするとは考えられなかったからだ。
「相模様、何か?」
私が不思議そうにしているのを見て、夫人は私の顔を覗くようにして言った。私が何を考えていたか夫人は気付いたようで、徐にキヌさんのことを話始めた。
「そうですね…相模様が不思議にお思いになるのも分かりますわ。私も多少は櫪家のことは存じています。女児は主に権力者へと嫁ぐのが習わしのようですから、現在の刑部家へキヌさんが嫁がれたことは、私も最初は不思議に思っておりました。ですが…今は亡き主人の話によれば、刑部家は以前、国の要職に就く程の力があったそうです。ですから、キヌさんが嫁がれたことも不思議ではないのです。」
「如月夫人…貴女は知っていたんですね?キヌさんのこと…。」
「はい…。私が如月へ嫁いだばかりの時の話ですが、病で倒れてしまったことがありました。医師にも原因が掴めず、主人も困り果ててしまっていたのです。その時、わざわざキヌさんが薬を持ってきて下さり、物は
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