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相模英二幻想事件簿
File.2 「見えない古文書」
W 6.8.AM10:23
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 昨日のあの奇妙な体験の後、如月夫人と飯森氏から以前に起きた事件の話を聞いた。
 二人の話によれば、この館には何かがあるらしい…とのことだ。
 前当主であった夫人の夫は、常に護守の様なものを持ち歩いていたそうで、いつも何かに怯えていた様子だった。夫人は何も感じなかったため、それが何を意味しているかは分からず、夫が亡くなった後に理由を知ったそうだ。どうやら、外部から館へ入った者には何も無いようだ。
 夫人も飯森氏もこの不可解な謎を解き明かそうと調べはしたが、以前にあった二度の火災によってその資料が失われていたため、大した成果は上げられなかったと言う。
 因みに、現在の館は昭和三十年代に再建されたもので、私が見た林の中の噴水も、この時に作られたそうだ。全部で七つ作られたそうで、常に水が出るように整備されているのだとか。万が一のための備えなのだろう。
 二度の火災のことだが、その原因は未だ不明だという。火元はバラバラで、そこには必ず人がいたそうだが…その全てが炭化するまで焼けていたとか…。犠牲者は当主、長男、長女または使用人で、完全に身元を特定できた遺体は一つも無かったそうだ。
 この火災の折り、警察当局は事件と事故の両面から捜査した。遺体の判別が出来ない以上、わざとそうした可能性があるからだ。言ってしまえば、誰かが誰かの身代わりに殺された…そういう推理も成り立つのだ。だが、これは結局憶測に過ぎなかったため、突っ込んだ捜査は行われなかった。夫人も飯森氏もここまでは調べられたが、これ以上は分からなかったと言うわけだ。
「火災…ねぇ…。関係があるのか…?」
 私は歩きながら、昨日聞いた二人の話を思い返していた。
 私は今、先日木下さんが言っていた刑部家へと向かっていたのだ。
 この刑部家もかなり古い家柄で、如月家やあの奇妙な数え唄について何か情報が得られるかも知れないと考えたのだ。ま、聞かないよりは何か掴めるかもしれないからな。
 私はそんな淡い期待を抱きつつ、刑部家の門へと辿り着いた。
 この刑部家も広大な土地を有し、如月家に劣らない名家と言える。私はその門にあったインターホンのボタンを押すと、如月家と同じようにスピーカーから声が聞こえた。
「どちら様で御座いますか?」
 幾分歳の入った女性の声だった。私はその問いに「先ほど連絡した者ですが。」と簡潔に答えると、直ぐに門が開かれたのだった。飯森氏が事前に連絡を入れてくれてたのだ。そうでなければ、こうもすんなり入れる家柄ではないのだ…。
 門を入って暫く進むと、如月家と同じような洋館が姿を現した。
 概観は如月家よりは多少小さなとは思うが、それでも通常家屋の比ではない。金や権力を持つと、どうしてこうも大きな家を建てたがるのかは、貧乏人の私には一生分からないだろう。いや…分かりたくもな
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