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相模英二幻想事件簿
File.2 「見えない古文書」
T 同日 PM7:45
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、私はある唄について興味を引かれたのだった。
 唄とは…この町に伝わる数え唄で、米沢さんはそれを歌ってくれたのだ。その唄を聴いた時、私は不意に思い出した。町に入った時に、これと同じ唄を耳にしたことを。
「それ…この町の方だったら、誰もが知っている唄ですか?」
「若い人は知らないかも知れませんねぇ。内容が内容ですから、あまり歌われなくなったので。私も一番しか覚えてませんしねぇ。あ…そう言えば数年前、この唄が何かを示す地図なんじゃないかと、何人かの学者先生が調査に来ていました。」
「地図…?」
 米沢さんの話に、私は思わず首を傾げて聞き返した。まぁ、童歌に財宝なんかの隠し場所を潜ませている…というありきたりな話なんだろう。こんな小さな町にこんな奇妙な唄が伝わってるのだから、何かがあると考えるのは不思議じゃない。だが…財宝は考え過ぎだな。
「私がここへ来る途中で、どこかの家から聞こえてきたんですよ。この唄が…。」
「え?ここ近年、子供は刑部家に生まれたくらいで、その刑部の皆様は今、神奈川の本宅へ行っている筈です…。歌う方がいるとは考え難いのですが…。」
 訝しそうに首を傾げる米沢さんを見て、私は何だか背筋に寒気を覚えた。
 では…あれは誰が誰の為に歌っていたというのだろう?いや…それ以前に、もう歌われなくなって久しいこの唄を、わざわざ歌う必要はどこにあるのだ…?
「あ…でも、どこかのお爺さんやお婆さんが、懐かしがって歌ったのかも知れないですねぇ。」
 米沢さんは笑いながらそう言ったが…それならそれでいい…。だが、私が町に入って早々に耳にした唄だ。もしかしたら、それに何か意味があるのかも知れない。
「米沢さん。この唄、この後の歌詞は?」
「先程言いました通り、私は一番しか覚えてないんですよ。奥様でしたら覚えてらっしゃるかもしれませんが…。どうかされましたか?」
「あ…いや、別にいいんです。ちょっとした好奇心ってやつですよ。」
 私がそう言って苦笑すると、米沢さんは再び首を傾げたのだった。
 その時、不意に壁掛け時計が鳴り響き、もう二十二時を回ったことを知った。
「もうこんな時間か…。米沢さん、お話しを聞かせて下さって有り難う御座いました。仕事の方は大丈夫ですか?」
「はい。後はお台所を少し片付ければ終わりますので。相模様はお部屋へ戻ってお休み下さい。」
 米沢さんはそう言うや、空になったカップを持って部屋を出た。私も暫くして立ち上がり、用意された部屋へと向かったのだった。
 私は部屋へ着くと、風呂にでも入ろうと着替えを用意していた。客室に備え付けの風呂があるなんて、ほんと…金持ちは違うよな…。
 そんなことをぼんやりと考えていた時、どこからか悲鳴らしき声が聞こえてきた。私は直ぐ様部屋を飛び出し、悲鳴が上がった方へと急いだ。こ
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