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相模英二幻想事件簿
File.2 「見えない古文書」
T 同日 PM7:45
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の茶封筒を差し出した。それも…分厚い…。
「如月夫人。私は前金を頂かない主義なんですよ。諸経費がかさむと分かっている時は別として、今回は部屋も食事も提供して下さってますので…。」
「そうは仰られても、時に何があるか分かりませんでしょ?どうか…お受け取り下さい。」
 夫人はそう言って、頑として意思を曲げるつもりは無いようだった。
 私はそんな夫人に、何か違和感を感じた。確かに、彼女は資産家で、この程度の金額はどうとでもなるだろう。だが…そう言うことではない気がするのだ。何と言うか、どことなく必死さがあるのだ。それを表に出さない様にしてはいるが…この前払金も、何らかの保証が欲しいと思ってのことなんだろう。
 私は目の前の封筒を見詰めながら、腕を組んだまま暫し考え込んだ。そして…その封筒を手に取り、返答を待っている夫人へと言った。
「では、これはお預りすると言うことにしましょう。自分で納得のいく結果が出せなかった場合、これはお返しすることになりますが…それで宜しいですね?」
「仕方ありませんわね…。ですが、私は相模様を信用しております。結城弁護士も貴方ならばと推薦して下さったので、きっと良い結果が出ると思いますわ。」
「あまり過度な期待は禁物ですよ。調査は始まったばかりですので。」
 私がそう言うと、夫人は目をパチクリさせて言ってきた。
「あら…もう始められていたのですか?」
「ええ…。町の様子、この館の部屋数と間取り、そして周辺の様子もチェックしていました。こうして一つ一つデータを収集することが肝心なんですよ。」
 私は苦笑しつつそう言うと、夫人は「そうなんですの…。」と本気で驚いている風だった。探偵ってもんを、一体何だと思ってたのやら…。
 話の済んだ後、夫人は使用人数人と話が出来る様にしてくれた。まぁ…正面切って聞くわけにもいかないため、結局は世間話程度なのだが…。
「相模様。珈琲のおかわりは如何ですか?」
「有り難う御座います。しかしこの珈琲、とても美味しいですね。」
 私はカップを差し出しながらそう言うと、目の前の女性は笑いながら言った。
「これは洋一様が、留学先のオランダから送られたものなんですよ。」
「洋一さんて…如月夫人の息子さんでしたね。今はオランダなんですか。」
 私はそう言うと、カップに注がれた香りの良い珈琲を口にした。
「ええ。洋一様は毎月、奥様へこの珈琲とチョコレートを送っておいでです。随分と沢山送ってくるもので、奥様は私達にも分けて下さるんですよ。」
 目の前で楽しそうに話す女性は、使用人の米沢さんだ。家政婦として雇われているそうで、十年近く住み込みで働いているという。ま、この館の使用人は全員住み込みらしいが。
 もともとこの土地の出身である米沢さんは、私に色々な情報を与えてくれた。その中でも
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