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提督はBarにいる。
明けちゃったけど正月の騒ぎ・その2
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どうやら寝技勝負に持ち込みたいらしい。臨む所だと仰向けになり、互いに寝技のポジションを奪い合う。現役時代は寧ろ投げよりも寝技が得意だったんだ、負ける訳にはいかない。やがて俺が腕を取り、腕ひしぎの形で極めにかかる。

「ほれほれ、タップしねぇと肘壊れちまうぞ〜?」

 武蔵相手に手加減はしない……いや、出来ない。少しでも力を緩めれば、こいつは易々と脱出してしまう。

「なんのこれしき……!」

 武蔵の奴も意地になってるのか、青筋をひくつかせながら必死に堪えている。その根性は認めてやるが、流石に嫁さんの身体を傷付ける趣味は無い。腕ひしぎを外すと、武蔵は息を乱しながら立ち上がる。

「どうした提督よ?まさかこの武蔵に手心を加えたのか?」

「まさか。やっぱトドメはビシッと投げの方が格好いいからな」

 俺がニヤリと笑うと、武蔵もフッと小さく笑う。

「なら容赦はしない。行くぞ提督!」

「おっしゃ来い!」

 勝負は一瞬だった。武蔵が飛び込んできた勢いのまま、右腕を取り、そのまま一本背負いで砂浜に沈めた。

「うし、次!」

 それからもかかって来る艦娘達を次々と投げ、極め、落としていった。一時間後、砂浜に立っているのは俺だけになった。

「よし、稽古終了!飯にするぞ!」

 いい汗をかかせてもらったからな。こいつらには正月らしいご褒美を用意しておいたのだ。




「皆さん、寒い中稽古お疲れ様でした。私と間宮さん、それと提督でお雑煮を作りましたのでどうぞ召し上がって下さい」

 倒れている連中の間を縫うように、鍋を抱えた鳳翔と間宮、伊良湖、それに駆逐艦の何人かがやって来た。テーブルとカセットコンロも持ち込んで、この場で餅を焼いて雑煮にしよう、という訳だ。美味い物には目がないウチの連中。先程まで砂の上でへばっていたのが嘘のように起き上がり、我先にと雑煮の前に並んでいる。

「今回は色んな地方のお雑煮を作りましたから、お好きなのを選んで食べてください!」

「お代わりも沢山あるから、心配しないでね!」

 そう。一口に雑煮と言ってもそのレシピは地方によって千差万別。餅の形から味付け、中の具材に至るまで様々な違いがあるのだ。

 例えば、醤油ベースの汁に鶏肉、大根と人参、それにゴボウの千切り、蒲鉾、なると、椎茸、三つ葉、セリ、そして餅は角餅。これはウチの実家の近所の一般的な雑煮のレシピだ。昔神奈川で仕事していた頃、具が多いと驚かれたのが懐かしい。同じ東北でも具が多いという共通点はあるが、入る物は大分違う。青森の津軽方面では鶏肉、人参、ゴボウや椎茸は入るが、大根や蒲鉾等の練り物はあまり入れずに竹の子を入れるらしい。他にも、山菜ミックスが入ったり里芋が入ったりと雑煮だけで満腹になりそう
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