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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百四十二話 器と才
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大将には艦隊を率いて貰います。宇宙艦隊の正規艦隊ではありませんが、それに準ずる艦隊として私の指揮下に入ってもらいます」
「しかし、小官には……」
それを率いる資格は無い、そう言おうと思ったが司令長官に遮られた。

「いずれ私はイゼルローン要塞奪回作戦を起こします。それほど先の事ではありません、先ず二年以内……」
「……」
「その作戦には上級大将にも参加してもらいたいのです」

「しかし、小官にはその資格が有りません。小官の失態の所為で三百万の兵が死にました。ゼークト、エルラッハ、フォーゲル、皆死んだのです」
私の言葉に司令長官は無言で頷いた。表情には先程まであった笑顔は無い、私を労わるような色が有る。

「そうですね、大勢の人間が死にました。皆、無念だったと思います」
「……」
無念、無念だっただろう。生きている自分でさえ悔しかった、恥ずかしかった。死んでいった彼らはどれほど悔しかったか……。だが、ゼークト達はその悔しさを表に出すことなく、帝国軍人として死んでいった。

「ゼークト、エルラッハ、フォーゲル……。本来ならローエングラム伯が彼らの無念を晴らすはずでした。しかし、伯はもう居ません」
「……」
司令長官が沈痛な表情をしている。司令長官はローエングラム伯の死を悼んでいるのだろうか。

「今、彼らの無念さを一番分かっているのは上級大将、貴方でしょう。彼らの無念を晴らせるのは貴方だけだと思います」
「……」
無念を晴らせるのは私だけ……。

「私とともにイゼルローン要塞を取り返しませんか。彼らも貴方にイゼルローン要塞を奪回して欲しいと思っているはずです」
「……分かりました、宜しくお願いします」
生き恥を晒してでも生きよう。そして何時か、イゼルローン要塞を奪回する。

「十一時から艦隊司令官を集めて会議を開きます。シュトックハウゼン提督にも参加してもらいますよ」
「小官も、ですか」
「当然でしょう、提督はもう私の指揮下に有るのです。私の指示に従ってもらいますよ」
目の前に穏やかに笑みを浮かべる司令長官がいた。


司令長官室を出てメルカッツ副司令長官の部屋に向かった。十一時までまだ二十分程ある。副司令長官とは知らぬ仲ではない、会議前に一言挨拶をしておいた方が良いだろう。メルカッツ副司令長官は快く私を迎えてくれた。肩を抱くように部屋の中に入れ、ソファーに座ることを勧める。

「その顔だと艦隊司令官になることを承諾したようだな、歓迎する」
「有難うございます」
「艦隊司令官は皆、若いのでな。卿が来てくれたのは有りがたい事だ、良い話相手が出来た」

思わず笑ってしまった。メルカッツ副司令長官は艦隊司令官としては決して老人と言う訳ではない。その副司令長官が話し相手が出来たと喜んでいる。今
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