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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百四十話 謀反に非ず その生き様を見よ
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たが笑顔を浮かべると場違いなほどに明るい声で話し始めた。

「楽しかったですよ、議長。ほんの少し貴方の悪口を言い、ほんの少し主戦論を言うだけで良かった。それだけで主戦派は私を仲間だと思い近づいてきたんです。もう少しで本当にクーデターを起こしてしまうところでしたよ」

おどけたようにネグロポンティが話す。彼のトリューニヒトを思う気持ちが伝わってきた。遣る瀬無い思いに囚われているとトリューニヒトが呻くような口調で答えた。

「起こせば良かったんだ、そうすれば君を憎み蔑むことが出来た。起こせば良かったんだ……」
「議長……」
トリューニヒトは俯きネグロポンティも俯いている。

「私の後任はアイランズをお願いします」
「アイランズ……。彼は知っているのか?」
二人とも小さな声だった。俯きながら小さな声で話している。相手の顔を見ることを、大きな声で話すことを恐れているかのようだ。

「全て知っています。彼はこの計画に反対でした。ですが最後は理解してくれました。彼ならこのクーデター計画で得た成果を十分に利用してくれると思います」
「分かった、そうしよう」

ネグロポンティが私とホアンを見た。
「議長の事を宜しくお願いします」
何も言えずただ頷いた。ホアンも一緒だ。

「ボロディン本部長、これまで色々と迷惑をかけた。アイランズと上手くやってくれ、議長を頼む。議長には君達の協力が必要だ」
「承知しました」
「それと憲兵隊を呼んでくれ、私の逮捕だ」
「既に手配は済んでいます」

ボロディン本部長の言葉に嘘はなかった。三分と待たずに憲兵隊が議長室にやってきた。ボロディン本部長と憲兵隊がネグロポンティの身柄を拘束し連れ去ろうとする。その後ろ姿にトリューニヒトが声をかけた。

「ネグロポンティ君、忘れないで欲しいことが有る」
「……」
「私が居たから君が居たんじゃない、君が居たから私が居たんだ。君は私が誰よりも信頼する友人だった。忘れないでくれよ、その事を」

ネグロポンティは何も言わなかった。だが小刻みにその肩が揺れているのが見えた。そして議長室を出て行った。

「レベロ、私は何をやっているのかな」
「……」
「主戦論を煽った、そしてそれに振り回されている。その挙句にネグロポンティに後始末をさせた。しかも彼を犠牲にしてだ……」

泣いているのか、トリューニヒト……。シャンタウ星域で一千万人死んでもお前は動揺を見せなかった。それなのに今のお前はネグロポンティを失う事にこんなにも動揺している。

「しっかりしろ、トリューニヒト。そんなことでネグロポンティが喜ぶと思っているのか? お前は最高評議会議長なんだ、その事を忘れるな」
「私は友人のために泣くことも許されないのか」

泣き笑いの声だった。いつも
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