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色を無くしたこの世界で
第一章 ハジマリ
第18話 単色世界にて
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「色による体調不良が原因とは言え……裏切りさんと共に戦った人間は、モノクロームの一角であるカオス様を負かした。それも、実体は二人だけ。残りのメンバーはその内の一人から生み出された分身だと言うでは無いですか」
「おや、耳が早いね。私はカオスと戦った子達については何も話して無いはずだけど……」

 そう、不思議そうな表情で尋ねるクロトに、スキアは「あぁ」と頬をかくと、ばつが悪そうな表情で話し出した。

「実は、クロト様とカオス様のお話を聞いちゃいまして……。あ、別に盗み聞きするつもりは無かったんですよ?」

 「誤解しないでくださいね」と焦り気味に唱えるスキアに、クロトは「分かってるよ」と笑いかける。

「まぁ……聞かれてマズイ話でも無いしね。そんな事で怒ったりはしないよ。それと、そんな遠回しな尋ね方をしなくても分かってるから」
「え」

 クロトの言葉にスキアは驚きの声を上げると、普段から大きい瞳を更に大きく見開いた。

「今度は、キミが行きたいんだろう……? アノ子とその子供達の元に……」

 何もかも見透かした様な赤い瞳を細め、クロトはモニター越しの黒い我が子を見据える。
 少しだけアンバランスな体を持つソレは、男か女か分からない中性的な声で「さすがはクロト様」と呟くと、ニコッと笑って見せた。

「私には秘策がありますから…………クロト様の期待にも、応えてみせますよ」

 彼の言う"秘策"……
 色を持たず、パーツの足りない極めて不自然な顔を持ち
 尚且つクロトに使える者達の中でも、力の弱い分類に入るスキア。

 そんな彼だけが持つ、他には決して真似する事の出来ない特殊な力。
 スキアにとってはカオスが倒され、モノクロームのメンバーも動けない今だからこそ、自分の本来の力を見せる事が出来る……
 ……主であるクロトの役に立つ事の出来る、絶好の機会だった。

「それじゃあ、スキア」

 無邪気な笑顔を浮かべている我が子をモニター越しに見つめながら、クロトは親として…………主としての命を下す。

「カオスが負けたと言う子供達の相手……今度はキミに任せるよ。手段はあくまで『サッカー』で。それ以外は……全て、キミの思う通りにやると良い」

 静かに微笑みながら、王としての威厳を含んだ言葉がスキアの耳に突き刺さる。
 黒い容姿に中性的な声を持つそのイレギュラーは、最後に一つ頷くと――――

「ハイ。クロト様」

 怪しく笑った。
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