第一章 ハジマリ
第18話 単色世界にて
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世界を覆う程に広く、黒く不気味な空。
そんな空に煌々と光る灰色の満月。
ここは色の無い、単色世界――通称【モノクロ世界】。
黒と白の濃淡で染められた不気味で不思議で異質な世界。
そんな世界の奥深くに佇むは、黒い外壁を持った巨大な塔。
周囲には同色の樹木が鬱蒼と生い茂り、辺りには灰色の霧の様なモヤが漂う。
空に浮かんだ満月を突き刺さんばかりに上へと伸びたその黒い塔は、この世界を統べる強大な力を持った男の住処。
この、異質で異端な世界を創り出した"主"であり"王"……
そして、今回の騒動の元凶。
「…………ただいま……戻りました」
黒の塔、最上階。
おぼつかない足取りで部屋へと入ってきたのは、先程まで天馬達と戦っていた『カオス』だった。
色のある世界に長時間いた影響で身体が溶けかかり、動く事もままならなかった彼は……身体こそ元に戻ったが、未だ具合の悪そうな白い顔をしている。
そんな彼を見て微笑むのは、この世界ではあまり見慣れないアンティーク調の黒い玉座に座る、毛先に黒いメッシュの入った白髪の男。
「……おかえり。カオス」
「…………クロト、様……」
『クロト』と呼ばれた男は、怪しく光る赤い瞳にカオスの姿を捕らえると、少しだけ低い声で話し出す。
「お疲れ様。……それで……アッチで、何があったのかな……?」
「聞かせてもらおうか」と言葉を続けると、クロトは玉座に深く腰をかけ、足を組む。低く響くその言葉が、カオスの鼓膜に突き刺さった。
――マズイ
カオスは、自分の犯した失態を思い出す。
今まで、身体の苦痛のせいで忘れていたが。
自身はクロトの命令を果たす事が出来ず、試合に負け、ノコノコとこんな場所まで帰ってきた。
つまり、自分は失敗したのだ。
全身から血の気が引く。
心臓がバクバクと大きく跳ねる。
この世界に戻ってきて、体調もある程度回復したはずなのに
……なぜだかとても息苦しい。
「……どうした、カオス。早く聞かせてみなさい」
一行に口を開こうとしないカオスに痺れを切らし、クロトが言葉を投げかける。
普段とあまり変わらない穏やかなその口調の裏に、イラ立ちや呆れと言った負の感情が混じっていそうで、カオスは瞼を強く瞑った。
室内の空気が重い。
クロトの視線が冷たくて、下げた頭を上げる事が出来ない。
――怖い
カオスの脳内にそんな言葉が乱雑する。
「ッ…………実、は…………」
カオスは先程あった事を全て話した。
裏切り者を追って色彩の世界へ行った事。
そこで出会った『松風天馬』と『フェイ・ルーン』の事。
裏切り者をかけて人間達のチームと試合をした事。
そしてその
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