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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百三十九話 揺れる同盟
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駄だった。司令長官は不機嫌そうに私を見ると空になったグラスを突き出した。
「お水をください」
「はい……」

何時になったらココアを淹れてくれと言ってくれるのだろう……。何処かで戦争でも起きないだろうか、そうなれば司令長官も何時までも不機嫌ではいられないのに。

私達を助けてくれたのは帝国広域捜査局のアンスバッハ准将とフェルナー准将だった。司令長官は二人の姿が見えると直ぐに立ち上がった。そして二人を応接室に誘う。司令長官の姿が応接室に消えると司令長官室に安堵の雰囲気が広がった。

「リッチェル中将、グスマン少将、少しは助けてください」
私が問いかけるとリッチェル中将が首を横に振って返事をした。
「無理だね、フィッツシモンズ大佐。貴官が宥められないものを我々にできるはずが無いだろう」
隣でグスマン少将が頷いている。思わず溜息が出た。私は司令長官の子守?



帝国暦 489年 2月 15日  オーディン 宇宙艦隊司令部 アントン・フェルナー


司令長官室はピリピリしていた。多分エーリッヒの結婚式が原因だろう。エーリッヒは派手な事が嫌いだからな。全宇宙に放送なんて、エーリッヒにしてみれば嫌がらせ、いや虐め以外の何物でもないだろう、不機嫌になったに違いない。

俺としても地雷を踏むつもりは無い。此処はアンスバッハ准将に任せて俺はできるだけ沈黙を守る事にしよう。
「司令長官閣下、御指示の有りました地球教とサイオキシン麻薬の件ですが」
「何か分かりましたか? アンスバッハ准将」

「オーディンには地球教の支部が三箇所有ります。その内の一つの支部で信徒の中に何人かにサイオキシン麻薬を使用しているのではないかとの疑いがあります」
エーリッヒは黙って聞いている。

「但し、地球教が組織としてサイオキシン麻薬を信徒に与えているという証拠は今のところありません。現状ではたまたま信徒にサイオキシン麻薬の使用者が居たというだけでしょう」

エーリッヒが不満そうに鼻を鳴らした。珍しい事だ、こいつは滅多に他人の前で不機嫌な表情、しぐさを見せない。それが鼻を鳴らしている。よっぽど結婚式が面白くないらしい。

「今、我々が取りうる手段は二つ有ると思います」
「……二つ」
「はい、一つは疑いのある支部に対する強制捜査、もう一つは地球への潜入捜査です」
エーリッヒはアンスバッハ准将の言葉に考え込んでいる。

「閣下、我々としては地球に人を派遣したいと思うのですが」
「……」
「周辺を探るより心臓部を探ったほうが証拠を得やすいと思うのです」

アンスバッハ准将が地球への直接捜査を提案している。これまでエーリッヒは地球への直接捜査は認めてこなかった。相手を刺激する事無く油断させておきたい、その考えがあったのだろう。だ
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