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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百三十九話 揺れる同盟
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交渉に前向きになるかもしれん。悪い話じゃない。どの道フェザーンは返還するのだ、こちらのコントロール下におく必要は無い、協力者で十分だ」
「それもそうか……」

トリューニヒト議長は頷くレベロ委員長から我々に視線を向けてきた。
「ペイワードには私から話そう。彼のほうで準備にどの程度時間がかかるか、それに合わせてこちらもクーデターを起そうとしている連中を拘束する」

ボロディン本部長がグリーンヒル総参謀長に視線を向けた。総参謀長が頷くと本部長も頷き返してから議長に答えた。
「あまり長くは待てません。それだけは忘れないでください」
「分かっている。君達を失望させるような事はしない」

「ヤン提督はイゼルローン要塞に戻します。クーデターが起きれば帝国の動向が心配です。彼にはイゼルローンに居てもらわなければなりません。そしてビュコック司令長官、ウランフ副司令長官にも艦隊に戻ってもらいます」
ボロディン本部長の言葉に皆が頷いた。そして本部長が一瞬私に視線を向けてから言葉を続けた。

「それと万一に備えてトリューニヒト議長の命令書を頂きたいと思います。クーデターを鎮圧し、国内の秩序を回復せよと」
「それは君宛かね、それともビュコック司令長官かな?」

「私宛に御願いします。それを元にビュコック司令長官、ウランフ副司令長官、ヤン提督に私が命令を下します」
「分かった、明日朝一番で君に届けよう」

何とか対応策はまとまった。問題は時間だろう……。おそらくはここ数日が勝負になる。どちらが機先を制するか、それ次第だ。



帝国暦 489年 2月 15日  オーディン 宇宙艦隊司令部 ヴァレリー・リン・フィッツシモンズ



昨日、私達はオーディンに戻ってきた。それ以来ヴァレンシュタイン司令長官の機嫌は控えめに言っても良くない。はっきり言えば最悪だ。普段は穏やかな笑みを浮かべて仕事をしている司令長官が今は苦虫を潰したような表情で書類を見ている。おまけに飲んでいるのは水なのだ。

リッチェル中将、グスマン少将も司令長官とは視線を合わせようとはしない、触らぬ神に祟りなしといった風情で仕事をしている、女性職員も同様だ。そのため司令長官室は常日頃の活気ある職場ではなくピリピリしたような緊張感のある職場になっている。ゼッフル粒子でも充満してるんじゃないかと思えるほどだ。

ヴァレンシュタイン司令長官が不機嫌なのは自身の結婚式が理由だ。司令長官はリヒテンラーデ侯に騙されたと思っている。本人は地味に行いたかったようだが、リヒテンラーデ侯の手配で式は新無憂宮の黒真珠の間で行われる事になった。民間のホテルや教会ではテロの危険が有るということでそれなりに筋は通っている。

しかし黒真珠の間で行なわれる以上、陛下の御臨席は避けられない。
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