第一章 ハジマリ
第17話 世界の危機
[3/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
口を開いた。
「二人が普段食べている、野菜だとか果物だとかが、キミ達の良く知る綺麗な色では無く、黒と白の濃淡だけだったら……どう思う?」
アステリの問いに天馬は頭を働かせる。
例えば……秋がよく作ってくれるケーキの上に乗っかっている苺。
あれがあんな美味しそうな赤では無く、真っ黒だったら……?
苺だけじゃ無い。
普段、自分達が口に運ぶ野菜や飲み物までもが黒や白の濃淡のみだったら……?
「美味しそうには……見えないね」
「て、言うか。口に運ぶのにも躊躇しそう……」
そう、苦笑いをしながら話す二人の言葉に「そうだよね」と笑うと、アステリは例え話を続けた。
「じゃあ次はキミ達が好きな景色……なんでも良いよ。自分が感動したり、見たら元気になる様な景色を想像して……」
“自分が好きな景色”
それを聞いて天馬が真っ先に思い出すのは、熱い戦いや様々な仲間と出会える、鮮やかな緑色のグラウンド。
小さい頃から慣れ親しんだ沖縄の海や……この稲妻町がずっと遠くまで見える鉄塔。
どれも見たら心の底から力が沸いてくる様な……明るい気持ちにさせてくれる大切な場所だ。
そんな景色達を思い出してか、天馬の心もホッと温かくなって、自然と頬が緩んでしまう。
が、アステリの口から発せられた次の言葉で天馬は現実に引き戻されてしまった。
「その、自分にとって大切で大好きな景色が……ただのモノクロ色だったら。黒と白しか無い、無機質で何の個性も無い景色だったらどう思う? 感動する?」
アステリの言葉を聞いて二人は顔を見合わせると、揃って首を横に振った。
想像する必要もないだろう。
そんな景色を見ても、きっとなんとも思わない。
いつも見てる景色が、モノクロ色だけだったらなんて……
――なんだか……凄く寂しい気分になる……
「色はね、この世で生きている者に様々な思いを抱かせてくれる。楽しかったり、嬉しかったり、寂しかったり、悲しかったり……そんな様々な思いを生み出すのが色。そして、そんな色を見て感じる様々な感情の事を、ボク等は総じて『心』と呼ぶ……」
その言葉を聞いて初めて天馬は、確かになと妙な納得をした。
例えば、赤い炎の絵を見て熱いと思うのも、青い氷の絵を見て冷たいと思うのも、あくまで見る側のイメージでしか無い。
実物がある訳でも無いのにそう思うのは、アステリの言う通り『色』のお陰だ。
これがもし黒白の炎と氷の絵だったら……熱い寒いは愚か、それが炎や氷だと言う事すら分からないかもしれない。
そう考えると『色』と言う概念は自分達の感情や心にとって、とても大切で無くてはならないモノなんだと天馬は改めて感じた。
そんな天馬の心情を知ってか知らずか、
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ