精神の奥底
64 食い違い
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不可能ではない。
しかしそれ以上に彩斗には頷けない理由があった。
「もうこれ以上、誰かを傷つけてまで、生きていたいとは思わない……」
本音が出た。
これは表面上の意識では気づいていなかった身体と心の本当の声だった。
アイリスには「死ぬのは怖い」、戦いの中で感覚が麻痺してしまったと言ったが、本当は心の何処かで死ぬことを受け入れていた。
心を鬼にしてこの数日の間、誰かを傷つけてきた。
だが心はもう限界だった。
『ここまで来て引き返すのか?』
「引き返せないことくらい分かってるよ。でもこれ以上は進まない。これ以上、進んだら……」
『もう遅い。お前は今朝までに実に61人の人間の命を奪っている』
「……61人…嘘だ…」
『事実だ。最初の廃工場での仕事の後、怖気づいたのか?命を奪うことは極力避けていたな?プライムタウンでは6人、学校で16人、高速道路で2人』
「……やめろ…」
『電気街で4人、中央街で2人……』
「…やめてくれ……」
『勘違いするな。我々はお前のことを非常に買っている。お前は61人……いや僅か61匹の害虫を駆除しただけで、おおよそ8万人の命を救った』
「!?」
確かに今まで戦ってきた連中はろくでもない奴らばかりだった。
最初に殺した不良たちはあのまま放置していたら、多くの人を傷つけていただろうし、Valkyrieにジョーカー・プログラムを奪われていたら、世界的な規模で多くの犠牲者が出たことだろう。
今朝方、街で取引をしていた顧客も同様だ。
ダメージを与えるに留まった連中を含めれば、8万人程度では済まない。
だがこれは結果論だ。
彩斗にとっては、不良を殺すことで未来の自分とミヤの命を救ったに過ぎないし、学校でValkyrieを御したことでメリーと人質の生徒約40人を救い出したに過ぎない。
『お前も気づいているだろうが、スターダストの力は武力でしか対処できない相手を圧する為のものだ。守る為のものではない。それを使うことでここまでの成果を上げたことは賞賛に値する』
「……」
『結果的であっても、お前のように正しく力を使える人間こそ我々の同士としてふさわしい』
力は使いようによっては大きな間違いを生む。
確かに極端な話、彩斗はスターダストを使って、銀行強盗しようと思ったことは無い。
Valkyrieを含めた悪意を持った人間たちと戦う時にだけ使ってきた。
ミヤの復讐、メリーの救出、個人的な感情が発端ではあるが、結果的には善を救い、この世から悪を減らしている。
「でも…無理だ……」
『どうかな?我々と出会う前からお前は何も変わっていない。我々と出会う前から、暴力を忌み嫌っていた。しかしお前が取ってきた行動はその心とは真逆だ」
「……何が言いたいんだ?」
『言われなければ分
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