62.連ナル鎖
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のだ。
(でも、それならこれは何……?)
もしオーネストに確かな目算と根拠があるというのなら、目の前のこの光景は何だ。
擦り込むように相手に血を与えるこの光景が、狂っていなくて何だというのだろう。
理性が否定する光景――しかし、アイズはその直後に再び己の想像を超えた光景を見る。
「こんな方法でしか呼び戻せないとは反吐が出るが……使った以上は結果を貰うぞ」
瞬間、オーネストの目の前に光り輝く『神聖文字』が浮かび上がった。
アイズはその光景を見たことがある。それは昔にたった一度だけ――ロキが自らのファミリアを迎え入れた際に、自らの力を分け与えて眷属とする瞬間。あの時、確かにロキは彼の冒険者の背中に血を垂らし、浮かび上がる『神聖文字』をその背中に刻んでいた。
儀式の様子は普通、他人には見せないし本人も見えない。
だからアイズがその光景を知っていたこともまた、ある種の運命だったのかもしれない。
(神の扱う神聖文字……オーネストがアズに血を分け与えた……?それじゃ、オーネストは『神』……!?そんな、でもオーネストから神の気配なんて感じないし、それに年を重ねて成長してる!他の神々がオーネストの正体を知らないこともあり得ない……)
混乱に次ぐ混乱に頭が掻き混ぜられる思いだったアイズだが、そんな疑惑はオーネストの顔を再び見ることで霧散した。
オーネストは、まるで祈るような目で只管アズの為に足掻いている。
その姿に、その意志に貴賤など存在せず、種族がなんであるかは問題ではない。
オーネストはアズの友達で、友達を助けようとしてるだけだ。
「だったら、私たちが今やるべきことは……二人の邪魔をさせないこと……」
オーネストがしているのは死ぬ為の闘いではなく、失わない為の闘いだ。
アイズたちがここに来たのは、死ぬ為ではなく助け、そして共に生きて帰る為だ。
何も迷う必要はない。ただ生きる事に必死になればいいだけだ。
「アイズ」
「……なに、オーネスト?」
「リージュ達をここへ呼べ。今の状態を凌ぎきるための作戦を説明する」
まだオーネストは諦めていない。諦めを胸に抱いたはずの男が、もう一度抗っている。
今のオーネストなら、頼れる。信用できて、信頼できて、彼がこうだと言えば迷いなくそれに向かって行ける。そんな頼もしさと優しさを、きっとオーネストは元々持っている。
(私も負けられない。『ロキ・ファミリア』の戦士として、意地でも生き延びる)
そう思うと、自然と心は落ち着きを取り戻していった。
溶岩の海に漂う小舟に取り残された生存者達は、傲慢にもだれ一人とて欠かさずこの地獄を渡り切ろうと画策する。生の連なりを途切れさせんがために、運命の大波
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