62.連ナル鎖
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「あ、あの、オーネスト……まさか介錯を……っ!?」
「後で説明してやる。今は黙って見ていろ……この馬鹿は俺が必ず連れ戻す」
最悪の想像に至ったアイズを強引に黙らせたオーネストは、未だに減刑を取り戻さない腕を無理やりアズの方へ向ける。
ドナの手に取った剃刀状の剣が、綺麗にオーネストの掌とアズの胸部を切り裂き、血飛沫が舞った。
= =
全身を包む虚脱感が、境目を越えるように倦怠感へと変貌していく。
既視。もう何度か味わったことがある気がする、土が濡れた匂いと止まない雨音。
(ああ――これは、今度こそかな)
なんとはなしにそう思う。これは、俺の手繰った「死」の在処。
ただ、体から抜け落ちるような熱い何かは停滞し、代わりに湿った布が肌に張り付く不快感がある。
意識は朦朧としているが、思考が出来ない程ではない。ただ、ひどく喉が渇いた。息苦しい時に酸素を求めるように、俺の本能は水を求めた。
(何か、飲み物――乾く、乾くよ)
意識を自分の横に向けると、見慣れた、しかしオラリオでは見慣れないペットボトルがあった。中にあるのは綺麗な水ではなく、得体の知れない着色料で白く濁った清涼飲料水だ。
咄嗟に手を伸ばそうとするが、腕が上手く動かず震える。それどころか、動かせば動かすほど全身に連続する鈍痛が響き、激痛にうめき声が漏れる。それでも喉の渇きが耐えがたい。人生でこれほど乾いたことはない程に、辛い。
「――□□□くん!?□□□くん、目を覚ましたのね!!」
不意に、女の子の声が聞こえ、目の前のペットボトルが持ち上げられる。
ペットボトルを持ち上げた少女はそれのふたを開け、病人用の水差しに流し込んでいる。
見覚えがあるし、聞き覚えもある声だ。思い出せないが、よく知っている人だ。
思い出そうとすると、鈍痛に交じって頭に鋭い痛みが奔った。
「はい、これ飲んで!慌てずゆっくり……!」
体を起こされ、鈍痛。痛みの余り触らないでくれと叫びそうになるが、声が上手く出ない。
口に水差しの先端が入る、少しずつ、ほんの少しずつ口が潤い、俺はひりついた喉を懸命に動かしてそれを飲み込む。途中で上手く呑み込めず気管支に入り、むせて全身が震える。それまで以上の激痛が奔り、俺は更に呻いた。
「あ……ご、ごめんなさい!大丈夫!?」
女の子が背中をさすってくる感触は暖かいが、全身の激痛を抑える効果はない。
楽に死にたいなんてどこかで思っていた罰なのか、生きることの苦しみが殺到してきたかのように苦しい。咳に交じって血と唾液が微かに自分の太股に垂れ、それを自力でぬぐうことも出来ない。
(痛みで……頭がおかしくなりそうだ……!)
やがて咳が収ま
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