62.連ナル鎖
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いた。
追い詰められて尚、相手を絶対的に殺害せしめんとする黒竜の狂気が生み出した、ここは常世の地獄だった。
そしてもう一つ――その灼熱を強引に拒絶するかのように発生させられた冷気の障壁内で、半径数Mの岩の小船で生きながられる数人の人間とそうではない者たち。『ゴースト・ファミリア』の姿がそこにはあった。
「回避が遅れていれば焼死していたか……?」
極めて冷静に周囲を観察し、まるで他人事のようにオッタルは呟く。
オッタルが黒竜の放熱を浴びる直前、リージュはまるで停止した時間を動いたような速度で『絶対零度』を展開してオッタルと黒竜の間に氷柱を滑りこませた。これによって辛うじて撤退の間に合ったオッタルは、上方から合流したドナ・ウォノ・オーネスト・アイズ・アズがいるリージュの元まで撤退し、氷による防御が間に合ったのだ。
「借りができたな、『酷氷姫』」
「黒竜相手に遊ばせる戦力がないだけだ。アキくんと黒いのが戦闘不能な今、腹立たしいが貴様が我等の最大戦力だからな。無駄遣いは出来ん」
「そうか……では先程の発言は撤回しよう」
リージュの人を駒と見るような発言に、オッタルは自然体でそう返答する。二人ともそういう精神構造であるが故、双方まったくストレスはない。これで真っ当な人間なら「それでも感謝する」とでも言うのだろうが、二人は言わないし気にしない。
アズとオーネストが黒竜と異次元の戦闘を繰り広げているさなか、リージュは臨戦態勢を維持しつつ只管に魔力の自然回復を図っていた。一切無駄に動かず、戦いに必要な最小限の集中力以外は意識をカットし、このような説明は極めて不自然だが「極度にリラックスした臨戦態勢」を取っていた。
魔力と精神力は密接な関係があり、魔力の回復にはポーションを除けば瞑想の類しかない。……一説では愛の接吻だの何だので魔力が爆発的に増大するという話もあったらしいが検証した馬鹿はいない。ともかくその努力の甲斐あってか、リージュは黒竜の予想外の抵抗に備えてそれなりの魔力を回復させることに成功していた。
ただし、それも今後の選択次第では水泡に――いや、荼毘に付すことになる。
「熱を防ぐまではいいが、周囲の熱量が大きすぎる。いくら私の氷でも神殺しの炎を突破して黒竜に止めを刺すには魔力が足りないし、攻撃と引き換えに防御を捨てる事になる」
「となれば必然、我等は焼死か。この熱量の中ではオーネストとて1分と持つまい。そこの大男はどうか知らんがな」
「………………」
ユグーは一言も言葉を発さず、ただ黒竜だった存在をひたすら見つめ続けている。
出来ることがないとはいえ、その静けさはいっそ不気味ですらある。
二人の後ろではアイズが慣れない手つきでオーネストの止血を行い、オーネストは両腕
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