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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
62.連ナル鎖
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トの視線は黒竜に向いてこそいるが、その眼は言外に「さっさと止めを刺せ」と要求しているように思える。

 達成不可能とまで謳われる三大怪物討伐クエストの達成は、恐らく世界を沸かせ、歴史に刻まれる偉業であろう。その最後の止めを刺したとなれば、その名は未来永劫語り継がれる英雄となることは間違いない。冒険者として、人間として、この上ない富と名声を得る事ができるだろう。

 オッタルもオーネストも他の面々も、最後の一撃に興味はないらしい。

(ならばしめやかに、そして確実に一撃で仕留める)

 二つの魔石を砕いたとはいえ、それでも一筋縄で倒せる存在でないことくらいはオッタルも認識している。間合いは十分。剣を握る手に力を籠め、一息吐き出し、下腹部に力を込めて踏み出す。地面を蹴り飛ばして放たれた矢のように加速する肉体をコントロールし、最強の一太刀を繰り出すための一つの装置になる。

 狙うは黒竜の首、そして魔石。
 灼熱の返り血を浴びぬように切り裂く。

「これで――」 

 振り上げた刃が黒竜の首へ吸い込まれるように降ろされる、その刹那。

 オッタルは、その極限の集中力で観察した黒竜の巨大な口の中に、鈍色の何かが入っていることに気づいた。それは剣の柄のような形であり、血が付着しており、そしてその柄の先に――『大きな魔石』が突き刺さるように妖しく輝いていた。

 あれは、なんだ。

 剣と、魔石だと?

 そういえば、オーネストの放った剣の行先はどこだった?
 その目にもとまらぬ一筋の光が通り過ぎた後に、魔石の破片はあったか?
 そして、その魔石には『まだ力が籠っているのか』?
 黒竜が眼球を抉られた際にぐらついたのは、『本当に体勢を崩したからか』?

 連続する疑問の回答予測が絡み合い、最悪の正答を導き出す。

「――貴様、まさかッ」

 頭を巨大な槌で打ち抜かれたような衝動に駆られたオッタルの刃が黒竜の首を落としたのと、黒竜の顎が魔石を剣ごと噛み砕いたのは、ほぼ同時だった。

 瞬間、煉獄すら焼き尽くす熱量の塊が、第60階層で爆発した。



 = =



 地面が融解し、もう少し戦い続ければ岩盤が崩落して61階層に落下するのではないのかと思えるほどに引き裂かれた足場。その場にいるだけで肌が焼け爛れそうな絶対焼失の溶岩の海の中に、二つの球体があった。

 一つは煌々とした妖光を放つ太陽の如き灼熱の塊――アズたちが「繭」と称したそれに近いもの。
 ただし、放つ熱量はあの時の比ではない。以前の「繭」はあくまで自らの肉体を進化させるための防衛手段だったが、この熱量は明らかに己を護ることより周囲に灼熱を撒き散らしている。既にダンジョン第60層は巨大な焼却炉か、或いは火山の火口と化して
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