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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百三十八話 式典の陰で
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だ。その時こそ地球教を一気に取り締まる事になるだろう……」

しばらくの間、沈黙があった。その沈黙を打ち破るようにボロディン本部長が咳払いをした。
「トリューニヒト議長、軍からもご報告する事が有ります」
「地球についてかね?」
「いえ、主戦派についてです」

政治家三人が顔を見合わせた。そしてレベロ委員長が探るような視線で向けてきた。
「何が有ったのかね?」
「いささか厄介な事になりつつあります。此処から先はグリーンヒル総参謀長から説明させます。総参謀長、頼む」

政治家達の視線がグリーンヒル総参謀長に集まる。厳しい視線だが総参謀長はたじろぐ事無く静かに話し始めた。
「この国でクーデターが起きる可能性があります」
「!」

政治家達がまた顔を見合わせた。彼らの顔は驚愕に満ちている。トリューニヒト議長が押し殺した低い声で問いかけて来た。
「どういうことだね、それは」

「これまで我々は情報部に主戦派の動向を調べさせていました。情報部のブロンズ中将からの報告は、主戦論を煽ってはいる、動向は注視すべきだが必要以上に警戒すべき点は現時点ではない、そういうものでした」
グリーンヒル総参謀長の言葉が静かに部屋に流れる。そしてトリューニヒト議長を始め政治家達は黙って聞いている。先程までの驚愕はもう無い。

「昨日の事です、情報部のバグダッシュ中佐と偶然会う事が有りました。中佐は私に何時彼らを拘束し取り調べるのかと尋ねてきたのです。私は意味が分からず、どういう事かと彼に問い返しました。それで分かったのですが、ブロンズ中将は意図的に主戦派の動きを隠蔽し虚偽の報告を行っております」
「……」

トリューニヒト議長の顔が苦痛に耐えるかのように歪んだ。議長だけではない、他の二人も同じように表情をゆがめている。レベロ委員長が強い口調で吐き捨てた。
「馬鹿共が!」

その激しい口調にグリーンヒル総参謀長は僅かに視線をレベロ委員長に向けたが、何事も無かったかのように話し続けた。
「バグダッシュ中佐によればフェザーンで例の紛争が有った頃から主戦派の士官達の間で会合が度々開かれたようです。そしてそれは今現在も続いている。我々は地球の事、そして捕虜交換の事に気を取られ、ブロンズ中将の報告を鵜呑みにしていました……」

「つまりブロンズ中将は主戦派の一員で、彼が虚偽の報告をしたのは我々を油断させるためだという事か……。その狙いはクーデターだと君達は見ている……」
ホアン委員長が呻くように呟いた。

「間違いないのだね、唯の不平家達の集まりではない、そう見て良いのだね?」
トリューニヒト議長の言葉は柔らかかった、だが視線は厳しい。間違いは許さない、そういうことだろう。

「会合に参加しているのは第十一艦隊司令官ルグランジュ中将
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