暁 〜小説投稿サイト〜
銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百三十八話 式典の陰で
[3/7]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
話して分かった事が有る。帝国と同盟の和平というのは彼の考えではない」
「?」
妙な事を議長が言い出した。ペイワードの考えではない? では和平交渉を言い出したのは誰だ? まさかとは思うがボルテック? 皆も訝しげな表情をしている。

「ルビンスキーの前の自治領主、ワレンコフの考えだそうだ。ペイワードはワレンコフの側近で信頼されていたらしい」
「待ってください、確かワレンコフは事故で急死しましたが、あれは……」

思わず口走った私にトリューニヒト議長が頷いた。
「地球教の話が本当なら暗殺の可能性が有るだろう。ペイワードは地球教の事を知らないようだ。ワレンコフもそこは話さなかったのだろう。だからペイワードはワレンコフはルビンスキーに暗殺されたと考えている。ルビンスキーが自治領主になった時、ペイワードが補佐官を辞めたのはその所為だ」

意外な事実だ、皆唖然としている。しかし、ワレンコフが同盟と帝国に和平を斡旋しようとしたのであれば暗殺は十分にありえる。ペイワードがルビンスキーを疑ったのは不自然ではない。

「地球は同盟と帝国を戦争で疲弊させ共倒れさせようと考えた。当然だがワレンコフはその事を知っていただろう。しかしペイワードの話によるとワレンコフはこのまま戦争が続けば共倒れよりも先に帝国の統治力が弱体化し、有力貴族たちが独立、地方政権を作るのではないかと考えたようだ」

トリューニヒト議長が周囲を見回しながら話を続ける。
「独立した貴族達は自分の手で帝国の再統一を目指すだろう。その時必要になるのが金だ。彼らが簡単に金を手に入れようとすれば当然だがその眼はフェザーンに行く。彼らは先を争ってフェザーンを自分のものにしようとする事になる」

当然と言って良い、軍備は金がかかるし戦争はさらに金がかかる。経済力の裏付け無しに戦争など出来ない。

「そうなれば同盟も黙ってはいない。フェザーンを他者の手に委ねる事は出来ないと出兵する事は間違いない。フェザーンは独立を奪われ、富を奪われ一気に没落する。ワレンコフはそう考えた……」
部屋の中にトリューニヒト議長の声だけが流れる。

「おそらくワレンコフは地球の望む共倒れが起きる可能性は極めて低いと考えたのだと思う。であれば地球の復権などに協力すべきではない、フェザーンの繁栄を守るべきだと判断した。フェザーンの繁栄を守るにはフェザーンの中立が必要だ、そして中立を保証する帝国、同盟の両者が必要だと考えた……」

「つまりそれが帝国、同盟に和平を斡旋しようとした、という事ですか」
「そういうことだ、ヤン提督。そしてそれが地球の知るところとなり逆鱗に触れた……」

ワレンコフの考えは正しいのかもしれない。しかし地球にとっては許せる事ではなかっただろう。自分達は疲弊と貧困に喘いでいるのに、その
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ