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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百三十八話 式典の陰で
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幾分苦笑を含んだ口調でトリューニヒト議長は我々に説明した。
「オリベイラ弁務官がペイワードの提案に否定的なのは、ペイワードが帝国に擦り寄ろうとしているのでないかと疑いを持ったからだ。ペイワードは帝国に居るボルテック弁務官を通して帝国に接触をと考えている、その事が気に入らなかったようだ」

なるほど、和平交渉を口実にボルテックとの関係を修復し帝国に通じる。現状の帝国と同盟の戦力差を考えれば当然出てくる発想だろう。だが本当にそれだけだろうか? 或いは和平そのものを喜ばなかったとしたら……。

「なかなか上手く行かぬものですな」
ビュコック司令長官が首を振りつつ言う、ボロディン本部長、グリーンヒル総参謀長が頷くのが見えた。帝国は同盟を滅ぼそうとしている、和平の意思は無い。そう思っても出来る事なら和平をと言う思いがあるのだろう。

「諦めるのが早いですな、ビュコック司令長官。トリューニヒト議長はペイワードと直接話し、彼に帝国との和平交渉を進めて欲しいと依頼しました」
何処か揶揄を含んだような口調でビュコック司令長官を窘めたのはホアン委員長だった。

「宜しいのですかな、議長。彼が裏切るかもしれませんが?」
揶揄された事が面白くなかったのかもしれない、一瞬だがビュコック司令長官はホアン委員長を見、そしてトリューニヒト議長に視線を向けた。

「ペイワードが同盟を裏切る気になれば、勝手に帝国と交渉を始めるだろう。ならば止める意味が無い。それに和平は無理でも帝国の内情を知る事ができるかもしれない。情報源は少しでも多いほうが良いだろう」

「ボルテック弁務官は帝国寄りと聞いていますが?」
「構わんよ、グリーンヒル総参謀長。和平となれば帝国に強いパイプを持つ人物が必要だ。現実問題としてボルテック弁務官以外に人はいないだろう」
何人かが同意するかのように頷いている。その通りには違いない。

「なるほど……、交渉を進めるのはペイワード、ボルテックラインで良いと思いますがそれを最終的に監督するのは誰です? オリベイラ弁務官ですか?」
不安そうな表情でウランフ副司令長官が問いかけた。おそらくオリベイラ弁務官が交渉を妨害するのではと考えたのだろう。トリューニヒト議長が首を横に振って否定した。

「いや、私だ。ペイワードの報告は私とオリベイラ弁務官に対して行なわれ、私の指示の元、和平交渉は行なわれる。オリベイラ弁務官はアドバイザーとして私へ助言するという立場になる」

トリューニヒト議長も、和平交渉を一顧だにしなかったオリベイラ弁務官を監督者にしては何かにつけて交渉を阻害しかねない、ペイワードもやり辛いと見たか。だが無視するのも拙い、そこでアドバイザーか……。上手く行くだろうか……、私は考えすぎなのだろうか。

「ペイワードと
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