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真田十勇士
巻ノ七十一 危惧その十四

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「気にするな」
「そうしてもらいたい」
「わかっております、ですが」
 それでもと言う木村だった。
「太閤様のことは」
「何とかしたい」
「御主にも頼む」
「出来る限りな」
「関白様を頼む」
「わかり申した」
 木村も応えた、確かな声で。
 そのうえでだ、二人にあらためて言ったのだった。
「ではそれがしも」
「頼む、それでだが」
 ここでだ、石田は木村に問うた。
「御主子が生まれたな」
「はい、先日」
「その子も大事にする様にな」
「有り難うございます」
「子はかすがいじゃ」
 石田はこの言葉も出した。
「宜しくな」
「それでは」
 こう話してだ、そしてだった。
 石田と大谷は彼等が頼む者達に対していない間を頼んだ、そのうえで名護屋に向かう。後ろ髪を引かれる思いであったが。
 それは家康も同じでだ、一時とはいえ江戸に向かう時に大坂城を見て言った。
「これではな」
「はい、残念ですが」
 服部も言う。
「それがしも十二神将達も」
「御主達も言われるとはな」
「これでは」
「うむ、関白様をな」
「お護り出来ません」
 どうしてもというのだ。
「残念ですが、しかし」
「まだ都にはな」
「真田殿がおられます、そして十勇士という」
「あの者達か」
「いますので」
 だからだというのだ。
「まだです」
「何とかなるか」
「そう祈りましょう」
「真田幸村殿か、敵であった時は恐ろしい相手だったが」
 しかしと言うのだった。
「味方になるとな」
「これ以上になく頼りになりますな」
「あの御仁がいれば」
「最後の頼みとしよう」
 こう話してだ、そしてだった。
 家康は大坂城から顔を離してだ、そしてだった。
 江戸に向かった、幸村を頼りにしつつ。
 

巻ノ七十一   完


                     2016・8・30
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