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銀河HP伝説
遭災弁当
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も妙なベクトルに進んでいるような気がしてならんのだ。いっそ中止にしてはどうだ?明日から独身者には仕出し弁当を振る舞おうではないか。卿もずいぶんと奥方の愛妻弁当を食べておらんのだろう?」
「いや駄目だ。まだフロイレイン・フィオーナのが残っている。さっきも彼女がミュラーに『明日は絶対に皆さんがおいしいと思うお弁当を作ってきます。』と楽しそうに言っていたではないか。」
そのフロイレイン・フィオーナのが鬼門なのだ!!とロイエンタールは言いたかったが言えなかった。そんなことを言えばフロイレイン・フィオーナに修復しがたい傷を植え付けることになる。まさかこのような配慮をする日が来るとは、女性に対しては冷淡であったかつての自分からは想像もできなかったろう。
「それに閣下がとても楽しみにしておられる。ワーレンのカレーがとてもお気に召したようだ。初日が良いと次のものはもっと良いのではないかと思いたくなるのは人間の性というわけだな。閣下とて例外ではないというわけだ。」
それが困るのだ!!と声を張り上げたくなったが、こめかみをひくつかせる程度で耐えたのはさすがは知勇の均衡がとれているロイエンタールであった。


そしてその翌日。愛妻弁当における一番の鬼門の日が幕を開けた。その日は午前中は将来の帝国の基盤の改革と軍政という重要な議題であったが、一部の提督たちはほとんど心ここにあらずといった風情であった。
 特に聡明さで鋭い意見を言うロイエンタールが心ここにあらずと言った感じを醸し出していたので、ラインハルトがたまりかねて「卿病気か?具合は大丈夫か?」と尋ねてきたほどだった。
 そんな午前中も瞬く間に過ぎ、やがてお昼の時刻がやってきた。従卒たちの手でテーブルクロスが敷かれ、一同は(小数を除く。)何が出てくるかと期待顔で待っていた。
「フロイレイン・フィオーナはフロイレイン・ティアナと前世では双璧と言われたそうですな。ならば料理の方もフロイレイン・ティアナに劣らぬ双璧ぶりなのでしょう。これは帝都オーディンの最高級ホテル『グラーズヘイム』のフルコースにも劣らぬものが出てくると期待して良いと思われる。」
メックリンガーが一人感慨深そうにうなずくのを見てティアナは泣きたくなった。
「私などはめったに美食を食べられないからな、フロイレイン・ティアナの料理はとても衝撃的だったが、今回はそれ以上か・・・・。」
ファーレンハイトも一人うなずいている。ワーレンもルッツもケスラーもケンプもアイゼナッハも皆待ち焦がれている顔をしている。
と、そこにようやく従卒たちの手でお弁当箱が運ばれてきた。銀製のそっけない作りの箱だったが、中央にはエリーセル伯爵家の紋章が刻印されており、作り手の並々ならぬ総意と決意を秘めているかのようだった。
「お待たせいたしました。どうぞ召し上がってくださ
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