暁 〜小説投稿サイト〜
銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百三十七話 重臣として
[5/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
いたからだろう。

改革ではなく帝国の政治全体を考えた場合はどうだろう、やはり圧迫感を感じるだろうか? いや圧迫感ではなく、むしろ彼に縋ったかもしれない。……なるほど、軍が政治を動かす事が常態化するか……、有り得ない話ではない。

私は、おそらくブラッケもだろうが、改革を行いこの国の不条理を正す事に主眼を置いていた。しかし目の前の二人は帝国という国の在り様を考えていた、そこが彼らと私達との違いなのだろう……。

「ヴァレンシュタインは帝国軍三長官の一人とはいえ、序列で言えば軍では第三位の地位にある。本来なら尚書である卿らのほうが地位は上、帝国の重臣なのじゃが、その卿らが軍の一高官に遠慮をする。正しい姿とは言えぬ……」
リヒテンラーデ侯が首を振りながら呟く。

「司令長官にどのような地位を用意するのです?」
ブラッケの質問にリヒテンラーデ侯が薄く笑いを浮かべた。
「帝国宰相、と言ったところかの」
「!」

リヒテンラーデ侯の言葉に驚愕が走った。ブラッケがこちらを見ながらリヒテンラーデ侯に途惑いがちに問いかけた。
「しかし、宜しいのですか?」
「別に私は構わん。あれが後を引き受けてくれれば楽ができるからの」

そういうことではない、帝国宰相! この一世紀、帝国宰相が置かれた事は無い。皇帝オトフリート三世が皇太子時代に帝国宰相を務めたのが最後だ。それ以後は臣下が皇帝の先例に倣うことを避け国務尚書が帝国宰相代理として政府を率いている。その慣例を破る事になる。

驚いている私達をリヒテンラーデ侯は笑みを浮かべながら見ていたが、その笑みを収めると低く凄みのある声を出した。
「国務尚書ではいかぬのじゃ。国務尚書はあくまで帝国宰相の代理でしかない。基本的には無任所の尚書、言わば軍務尚書と同格よ。あの男には帝国宰相としてこの国の文武の頂点に立って貰わねばならん」

「あの男の望むところではないかもしれん、しかしもう引き返せぬのじゃ……。卿らも心するがよい、国家の重臣となった以上、改革を行なう事だけがその任ではないぞ。国家の行く末を考えてこそ政治家じゃ。それこそが政(まつりごと)を執るという事でもある。それが出来ねば官僚となんら変わるところは無い、その事を忘れるな……」
「……」

「ヴァレンシュタインにはそれができる。だから皆があの男を頼るのじゃ。あの男の本質は軍人ではない、政治家じゃ。にもかかわらず、今現在は軍の一高官に過ぎぬ……。力量ある人物が地位を得ぬ事の恐ろしさが分かったか?」
「……」

リヒテンラーデ侯の言葉に私もブラッケも頷く事しか出来ない。今更ながら目の前の老人が国務尚書として帝国の舵を取ってきたのだと思い知らされた。圧倒的なまでの威圧感だ。

「本人に野心が有れば謀反を考えるじゃろう、野心が無けれ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ