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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百三十七話 重臣として
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ゃ。あの男なら言った事は必ずやるだろうと……、それに卿らを抜擢し改革を唱えたのもあの男だと皆分かっている……」
「こうなるのは必然ですか?」

私の問いかけにリヒテンラーデ侯が頷いた。
「あの男がバラ園で撃たれたとき、卿らはカストロプより戻ってきたの、あの時何を考えた?」

ブラッケが私を見た。そして多少口篭もりながら答えた。
「……それは、司令長官に万一のことが有れば改革はどうなるのかと思いました」
その通りだ、あのときの不安は忘れようが無い。司令長官に万一の事が有った場合、改革がどうなるのか、リヒテンラーデ侯には、ゲルラッハ子爵には改革を継続する意思はあるのか? その不安だけが私達の心を支配した。

「そうであろう、あの男こそが改革の推進者だと卿らは思っていた。その思いは卿らだけのものではない。辺境の貴族達も同じ思いなのだ……。このままヴァレンシュタインに辺境星域を任せる。卿らはあの男の指示に従え。帝国政府が本気で辺境星域を開発しようとしていると皆が理解するはずじゃ」

「官僚達もですか?」
「官僚達もだ」
何処か皮肉を帯びたブラッケの問いにリヒテンラーデ侯は重々しく頷いた。そしてブラッケに冷笑を浴びせた。

「どうやらあの男の事を一番分かっておらぬのは卿らのようじゃの」
「そんな事は」
抗議するブラッケを無視して侯は言葉を続けた。

「内務省は分割されかつての力は失われた。宮内省は典礼省を取り込んだとは言っているが内実は宮内省の人間と典礼省の人間でポストの奪い合いよ。役に立たぬと判断された人間は左遷されつつある。あの男を怒らせるとどうなるか? 官僚達が一番身に染みて分かっているはずじゃ」
「……」

リヒテンラーデ侯の言葉に何も言えずにいると侯は微かに笑って言葉を続けた。
「まあ良い機会じゃ、いずれヴァレンシュタインにはこちら側に来てもらうからの。ここで実績を付けて貰うとするか」
「こちら側?」
こちら側とは政治家にということだろうか? 問いかけた私にリヒテンラーデ侯が頷いた。

「今のままでは拙いのじゃ。今のまま進めば帝国の政治は歪みかねん」
歪む? どういうことなのか? 思わずブラッケを見た、しかし彼も訝しげな表情でこちらを見返してくる。そしてリヒテンラーデ侯とゲルラッハ子爵は沈鬱と言って良い表情だ。

「リヒテンラーデ侯、それは改革が帝国の政治を歪めるという事でしょうか?」
ブラッケが何処か憤然とした表情で問いかけたが侯は首を振って否定した。
「そうではない、改革とは無関係なところで問題は起きている……。いや、関係が無いとは言えぬか……。問題はの、軍と政府の力関係が逆転することじゃ」

軍と政府の力関係が逆転する……、軍の力が政府の力を凌駕するという事だろうか、だからヴァレンシ
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