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第七十四話 捕虜交換式典に行ってきます!
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いたからこそ、それ以上何も言うことはしなかったが、ヒルダの姿勢には内心うなずくところが多かった。
イルーナはこの様相を見て、ひそかに安堵するとともに、一度自分たちとヒルダとが会ってゆっくりと話をしてみたいと思っていたのであった。
一方――。
自由惑星同盟では、捕虜交換に際して、ある提言がなされていた。正確にはごく一部の情報部内、それも情報部第一戦略科課長であるシャロンと少数の幹部だけの事であった。そこには、自由惑星同盟の捕虜交換に赴くビュコック中将やヤンなどは入っていない。彼らには明鏡止水の気持ちで臨んでほしいというシャロンの思いからであった。
「この機会に工作員を送り込みます。その場所、その目的をここに記しました。」
シャロンは幹部たちに冊子を配った。それも分量はあまり多くはなく、内容は簡潔かつ明白を極めていたものである。幹部たちはそれを読み、次第に顔色を変えていった。
「ここまで行う必要があるのか?」
「最短かつ最大限の成果を上げるためには、少々イレギュラーな手段を取る必要性があるという事ですわ。それに、費用対効果を考えれば、決してハイコストではないと思いますが。」
「それはもっともだが、失敗した場合にはどうなる?」
幹部の一人が質問した。
「そのときは、工作員たちは自由惑星同盟に貢献した尊い犠牲となり、自由戦士勲章を授与されることになるでしょう。」
シャロンは微笑したが、それに慄然としたものが数名いたことは否めなかった。
「艦隊戦だけが戦略ではありません。時にはこうした謀略を行う必要性もあります。どのみち7月末の条約期限満了までは私たちは動くことはできませんから、布石を打っておくのは悪くはない事だと思いますが。」
「だが、相手もそれを警戒し、検問をしている可能性もあるぞ。が、俺は別に反対はしないがな。」
と、ブラッドレー大将。
「検問に関しては、運でしょうね。数百万の人間の中からたった数人を見つけ出す。砂漠から石を探すような物でしょうけれど。それにしても捕虜交換のリスト名簿と実際の人間が違うというその程度にしかすぎませんわ。」
「それによって、修好しつつある関係が崩れ、帝国軍が一気に攻め寄せてきたらどうするかね?」
と、シトレ大将が質問する。
「どうしてです?リストと実在者が違うにすぎないというのに、それをもって大艦隊を出動させるほど、現在の帝国軍の首脳陣が短慮であるとは思えませんわ。それに、帝国も内乱に突入し、少なからずその戦力を消耗しました。今は互いに傷をいやすときですわ。ですが、その傷口からウィルスを体内に送り込むことはしても差し支えないでしょう。」
「拷問によって、自白が懸念されることは?」
「その前に彼らには死んでもらうだけですわ。」
あっさりとシャロンが言ったので、万座はざわめいた。
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