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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百三十六話  不安
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ンの裏の顔です。彼らは帝国と同盟を共倒れさせ、地球による銀河支配を望んでいる。フェザーンも地球教もそのために用意された……」
私の言葉を聞くキスリング少将の眼が驚愕に見開かれた。



帝国暦 489年 1月31日  帝国軍総旗艦 ロキ  エーリッヒ・ヴァレンシュタイン


『いや、御苦労だったの。よくやってくれた』
スクリーンには御機嫌な笑みを浮かべるリヒテンラーデ侯が居た。辺境星域の視察が終わった事を報告してからはずっと笑顔のままだ。

「よくありませんよ。私は宇宙艦隊司令長官なのですよ、軍人なんです。それなのに辺境星域の要望書は全て私のところに来る事になりました。辺境星域の開発の責任者は私になってしまったんです」

『まあ、良いではないか、彼らがそうしたいというのだからの』
何を言ってやがる、このクソ爺。さっきから顔が笑みで崩れっぱなしじゃないか。最初からこれが狙いだろうが!

クラインゲルト子爵領で思った俺の悪い予感は見事に的中した。何処に行っても辺境の貴族達の政府への不信感は酷かった。要望書は全て俺に渡すと言う、リヒテンラーデ侯でもゲルラッハ子爵でも改革派の政治家でも、誰でもいいから文官に送れと言ったが納得しない。“閣下の力で実現してください”その一点張りだ。

「正直な話、あれは一体どういうことなのです? 政府に対してかなり強い不信感を持っていますが?」
俺の言葉にリヒテンラーデ侯はちょっと困ったような表情をした。爺、カワイコぶっても無駄だ。正直に吐け、俺は怒っているんだ。

『まあ、無理も無い話しなのじゃが……、辺境星域の開発については彼らから何度も要望が出ておるのじゃ。卿は知るまいが十年ほど前までは毎年のように何処かの貴族が要望書を出しておった』
「それで」
『全て却下された……』

リヒテンラーデ侯は決まり悪げな表情をしている。
「却下の理由は何でしょう」
『決まっておる、金が無いからじゃ』
胸を張るな、爺様。金が無いのは自慢にならん。金を作ってから胸を張れ。

『彼らの要望を受容れ何処か一箇所の開発をすれば、必ず他もと言って来るのは眼に見えておる。辺境星域全土を開発するとなれば膨大な資金が必要じゃ。戦費を調達するだけで手一杯での、そんな余裕は無かった』

「貴族専用の金融機関は使わなかったのですか?」
今はもう無くなってしまったが、と言うより俺が潰してしまったが貴族には無利子、無期限、無担保で金を貸す金融機関があった。あれを使えば開発資金を用意するのは難しくは無かったはずだ。

俺の問いにリヒテンラーデ侯は手を振って否定した。
『あれは駄目じゃの、門閥貴族には貸していたが辺境の貧乏貴族になど金は貸さぬ』
遊興費は出してもまともな開発資金は出さないか……。潰して正解だ
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