巻ノ七十一 危惧その七
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「何がおかしいのだ」
「そうだな、しかしだ」
「それがか」
「口実になりそうじゃ」
「関白様ご謀反の」
「その意図ありとな」
「馬鹿な、その様なことを言えば」
それこそとだ、大谷は石田に返した。
「誰でも大名、いや武家ならばじゃ」
「謀反の考えありとな」
「なってしまうぞ」
「しかしそうしてでもな」
「太閤様はか」
「考えはじめておられるやもな」
「それは大変なことじゃ」
さしもの大谷も驚愕を禁じ得ない、背中を冷たい汗が流れ止まることはない。明らかな危機をそこに感じているからだ。
「そうまでして口実にしたいと思われておるのなら」
「太閤様はな」
「関白様を何が何でもじゃ」
それこそ恥も外聞もなくだ。
「消すおつもりじゃ」
「お拾様を跡継ぎにする為にな」
「お拾様はまだお生まれになったばかりじゃ」
この事実をだ、大谷は言った。
「まだ何があるかわからぬ」
「子はどうしてもな」
「昨日笑って駆け回っていてもじゃ」
「次の日にはということがある」
「少しの風邪ですぐに死ぬ」
それが子供だというのだ。
「若し関白様がおられねば」
「その通りじゃ」
「それでお拾様に何かあれば」
「豊臣の血は絶える」
「ましてやそのまま成長されても」
大谷は拾がそうなる場合についても述べた。
「太閤様も還暦が近いのじゃ」
「ではな」
「何時どうなるかわからぬ」
「関白様にいてもらわねばならぬ」
「ご幼少では天下は治まらぬ」
まだそうした時期ではなかった、天下が統一されてまだ数年だ。天下の治は磐石とまでは至っていないのだ。
だからだ、秀吉に何かあった場合残された幼少の拾ではというのだ。
「乱れる素じゃ」
「それでわしも思う」
「次の天下人はじゃな」
「関白様しかおられぬ」
「では」
「わしは何があっても関白様をお護りする」
石田は大谷にその誓いを告げた。
そのうえでだ、大谷に頭を下げんばかりにして言った。
「御主も頼む」
「最初からそう決めておる」
これが大谷の返事だった。
「ならばば」
「うむ、それではな」
「我等、そして心ある者達を集め」
「関白様をお護りしよう」
「必ずな」
こう誓い合う、二人は早速有志達を集め秀吉の考えをあらためさせると共に秀次を護る為に動きはじめた。そして。
秀吉の正妻である北政所にもだ、二人は面会を願い出て言うのだった。
「どうか関白様をです」
「お護り下さい」
「どうも太閤様はお拾様を大事にされるあまり」
「関白様を」
「それは私も感じています」
ねね、北政所は二人に静かに答えた。
「太閤様はどうも」
「はい、関白様がおられねば」
「天下は危うくなります」
「ですからどうか」
「北政所様
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