百十一 激震
[4/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
のを、つい今しがた白と君麻呂に任せてきた彼は、溶岩が湧き立つこの異様な空間に足を踏み入れたのだ。
紫苑の無事な姿を遠目で確認してから、通路の端に横たわる黄泉の配下であった四人衆の内の一人が死んでいるのを見て、ナルトはなんとなく成り行きを察した。
「…約束、しただろ」
湖畔で交わした、守るという約束を口にする。二人しか知り得ない内容を告げたことで、紫苑はあからさまに安堵の息をついた。そしてようやく、黄泉の存在を思い出す。
自分の身を案じて追って来てくれたナルトにばかり気を取られていた彼女は、慌てて黄泉に注意を向けた。しかしそれは杞憂であった。
黄泉は何をするでもなく、ただ、ナルトを凝視していた。
やがて、話す際にも身動ぎ一つしなかった黄泉の肩が大きく震える。そのかさついた唇は弧を描き、身体からは黒い靄のようなものが滲み出ていた。
「まさか…たかが人間に、これほどの逸材がいたとは…」
独り言のように何事かをぶつぶつ呟く黄泉の顔は、先ほどまでの無表情に反して、狂気にすら思えるほどの喜悦の色を浮かべていた。
黄泉の身体ではもうとても抑え切れないのか、それともその器では満足できないのか、男の肉体から黒い蒸気なのか汚泥なのか判別出来ぬモノが滲み出る。
妖気と瘴気を孕んだ闇が、黄泉のぐったりとした肉体を操っているのは確かだった。黄泉の体内に【魍魎】の魂が宿っている事実に気づいていた紫苑が思わず後ずさる。
顔を顰めたナルトに向かって、黄泉の唇が薄く開いた。寸前までは辛うじて人の声だったものが、もはや別のものと化している。
かつて大陸を蹂躙したとされる魔物と初めて対峙しても、ナルトは何の反応もない。
けれども、次に黄泉の口から語られる【魍魎】の一言に、常に冷静沈着なナルトの顔が僅かに歪んだ。
『貴様の身体こそ我が理想。その身を明け渡せ、小僧』
絶大な力を宿す闇の魔物が渇望する。瞬間、紫苑は己の胸元の鈴が激しく鳴るのを聞いた。
「…―――今、なんと言った?」
今まで生きてきた中で、これほど激しく警報を鳴らす鈴の色を、紫苑は聞いたことが無かった。
鈴から放たれる光が彼女を守るように包み込む。それはかなり高度で強固な結界だったが、【魍魎】から身を守る為のものでは無いようだった。
紫苑の鈴の音が洞窟中に響き渡る。その中でのナルトの声は、酷く小さいものだったが、そこから感じられる感情がこの洞窟の空間内を一瞬で満たしていた。
「俺の身体を、器にでもするつもりか」
刹那、実体を持たぬ【魍魎】の身が地に伏せられた。
今はまだ、黄泉の肉体と繋がっているからだろうが、いずれにしても、半分ほど身体から滲み出ている黒い靄までもが、地面に押し付
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ