百十一 激震
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ッと笑った。
「教えてやろう…。我にお前を殺すことはできぬ。だが同様に、お前もまた、我を消し去る力は無い。何故なら…―――」
黄泉が流し目で此方を見遣る。妙なことを口走る男から、紫苑は眼を離すことが出来なかった。
「―――我らは、元は一つ、であったからよ…」
「う、嘘じゃ!!」
黄泉の言葉に、紫苑は間髪容れずに反論した。
「でたらめを言って惑わすつもりか!」
巫女の戸惑う姿に、「嘘を言う必要があるか…?」と黄泉は益々口角を吊り上げる。紫苑は黄泉の言葉に耳を貸さず、己のやるべきことを為さんと足を動かした。
黄泉が座る輿の背後にある石の祭壇。其処には封印の紋章が描かれており、その中央には棺が沈んでいる。
祭壇の下に隠されているそれこそが、【魍魎】の肉体を封じる棺であった。
「い、今すぐにお前を…」
黄泉の後ろに回った紫苑が、一段高い場所にある祭壇へ上がる。自分を封印しようと動いている巫女の様子を気にも留めず、黄泉は淡々と言葉を続けた。
「『封印』とは――我とお前が、一つになることを言う…お前の母―弥勒は、それを受け入れた。そう、弥勒は…お前の母は、」
そこで一端言葉を切って、黄泉は声を聊か大きくさせて紫苑にとっての衝撃的な発言を述べた。
「…――我の中にいる…」
堪らず、紫苑は息を呑んだ。素知らぬ顔で祭壇に上り、封印の儀式を始めようとしていたのに、黄泉の言葉一つ一つが彼女の心を揺さぶる。
「あまりの力に、自らその力の使い方を誤らぬよう…二つの心・思想に分かれ、互いに互いを戒め、思い、見つめ合って存在してきた…」
いわば、陰と陽の間柄なのだろう。陰が魍魎であり、陽が巫女であるのは明らかだった。
「何時の間にか、【巫女】と【魍魎】に、名は変わってしまったがな…」
背を向けている黄泉が自嘲気味に笑ったのが、紫苑にも感じ取れた。けれども、話し続けているにもかかわらず、微塵も動かない黄泉の背中を、紫苑は後ろから訝しげに睨み据える。
人間ならば、呼吸していれば多少は揺れるだろうその身体が、先ほどからピクリとも動かない。にもかかわらず、黄泉は抑揚のない声で語り続けている。その異常さが不気味だった。
頭を軽く振って、儀式に集中しようと気を取り直した紫苑の耳に、今度こそ、求めてやまない声が届いた。
「―――紫苑」
凛とした声が聞こえるや否や、紫苑は弾かれたように洞窟の出入り口へ視線を投げた。其処に佇む存在を認めた途端、肩の力が抜ける。
しかし、途中で思い返した彼女は確認の言葉を問わずにはいられなかった。
「ナルト!本物の、ナルトか!?」
紫苑の質問に、ナルトは怪訝な表情を浮かべ、周囲に視線を走らせる。
封印の祠の入り口を守る
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